オオアマナとホソバオオアマナ

4月末から5月頃白い花を咲かせる園芸植物が逃げ出したものにオオアマナ(Ornithogalum umbellatum L.)と、ホソバオオアマナ(Ornithogalum tenuifolium Guss.)があります。

私は1970年ころ名古屋市緑区に住んでいました。近所では「キューバンリリー」という名の小さな星型の白い花を咲かせる植物がはやっていました。数年後、東京近辺では同じ花を「ベツレヘムの星」と呼んでいる事を知りました。これがオオアマナだと思っていました。ところが東京都の小石川植物園にあるオオアマナは私の考えているオオアマナと少し違います。

小石川植物園のオオアマナ

茂った葉 花のアップ 小石川植物園で花の様子を見てきました。
4月1日、まだ咲いている花は少数でした。葉が沢山しげり1個の鱗茎から何枚の葉が出ているのか分からないほどです。緑色は濃く、まるでアブラムシ(=アリマキ)の排泄物が降ってぬれているように照り輝いて見えます。咲いていた花を上から見ました。

2005年5月、小石川植物園と同じタイプの鱗茎を譲っていただき、長年育てていた「キューバンリリー」と2球ずつ並べて植えました。鱗茎の大きさは小石川タイプのものはふた周りくらい小さく明らかに別物に思われました。春になり出てきた葉の色、幅、枚数がかなり違います。季節を追って順次画像を並べ比較してみます。

参考文献

手持ちの以下の図鑑に書かれている事をまとめてみました
『日本帰化植物写真図鑑』(全国農村教育協会)、『神奈川県植物誌2001』(神奈川県植物調査会)、『日本帰化植物図鑑』(北隆館 長田武正)

大きさの違う2種類の鱗茎を観察した記録

このページを作ってから6年近くたった2010年5月、両者の違いを教えてくださる方がありやっと、どちらがどちらであるか分かりました。その方に感謝いたします。
年月日大きい鱗茎
(ホソバオオアマナ)
小さい鱗茎
(オオアマナ)
コメント
2006.02.09
 葉
大の葉小の葉大きな鱗茎の方が葉が太く、葉の数も多い。
色はチューリップやアマナのようにやや白い。
2006.04.22
 葉
大の葉小の葉同じ距離から撮影したそれぞれの葉

小さい方は周囲に1枚ずつの細い葉を出している固体が増えている。
2006.04.22
 蕾
大の蕾小の蕾花数の違いがすでに分かる。
2006.04.28大はまだ蕾小は咲き始めた大きい方はまだ蕾

小さい方は咲き始めて4日め。
夕方になったり、雨天の日には花を閉じる。

2006.04.29
 花
大の花小の花大きな鱗茎の方も花が咲きはじめた。
鱗茎の小さい方が花径は大きいが、花被片は細い。
2006.05.20
 果実
大の果実小の果実大きな鱗茎の方は果実が大きくなるものもある。
小さな鱗茎の方は果実が大きくならずしなびた。
2006.06.04
 鱗茎
大の鱗茎小の果実大きな鱗茎の方はスイセン等と同じ分球の仕方。
小さな鱗茎の方は細い茎の先に上向きに小さい新鱗茎をつけている。
 分球の違い
2006.06.04
 種子
大の種子種子はできなかった大きな鱗茎の方は直径3mmくらい、表面に凹凸のある種子ができた。
エライオソームは見当たらない。

小さい鱗茎の果実

2006.4.24 近所には小石川と同じタイプのオオアマナが沢山咲いていましたが、花が終わり子房が膨らみはじめました。同じ茎から出ている果実を並べてます。

若い果実若い果実若い果実若い果実


6稜が等間隔のもの、2本ずつ近接しているもの、4稜しかないものなど様々です。
実を横に切ると3室に分かれています。
1室を縦に切ってみると未熟な種子が並んでいます。
・・・けれど近所の物を含めて60株程度を見た限りでは種子はできず実は茶色くしなびてしまいました。
3室未熟な種子

大きい鱗茎の果実

大きな鱗茎2個には合計26花咲き、3個の実が熟しました。
種子はそれぞれに9、8、5個入っていました。
成熟できなかった胚珠もたくさん残っていました。(2006.6.4 撮影)
種子が熟したものは6稜が2本ずつ近接していますが、熟さずにしおれたものは等間隔のものもありました。
種子種子

2つの種類の違い

文献にある「果実の間隔の違い」は両者の決め手にはならないようです。明らかな違いは分球の仕方と種子繁殖の有無にあるように思えます。

大きな鱗茎の方は、スイセンで見慣れた分球の仕方をしています。翌年になっても夫々が離れないまま1球につき1本の花茎を伸ばして花を咲かせます。分球する数が少ないので少数であっても種子を作り、翌年には葉が1枚伸び、毎年葉が増えていって数年後には花をつけるようになります。

小さな鱗茎の方は親球の下部から上向きに白い細い茎のようなものが伸びてその先に上向きに小さな子球がずらりと並びます。翌年になると細い茎状のものは消えて親株の周囲に転がった多数の子球がそだち葉を伸ばし子球はふとり、更に翌年になると花をつけるものも出てきます。そのため密生してきますが種子はつけません。

どちらがどちらなのか?

私は、よく似た花を咲かせる2種類のオオアマナの仲間を較べてみて、小石川植物園に沢山はえている方が葉が細いのでホソバオオアマナではないかと思っていました。
ところが、子球をたくさんつける方(Ornithogalum umbellatum)にオオアマナという和名をつけ、鱗茎はそれよりも大きくて葉はより太いけれど子球をつけない方(Ornithogalum rthophyllum)にホソバオオアマナという和名をつけてしまったそうです。 ということで、鱗茎が大きくて葉が太い方がホソバオオアマナ、鱗茎が小さくて葉が細い方がオオアマナになります。
名前が逆転したイメージであったため長い間ずいぶん悩んでしまいました。このページをご覧くださって混乱に拍車をかけてしまった方ごめんなさい。今回のが正解のようです。


1花序につく花の数はオオアマナでも日当たりの良い肥沃な場所に育つものでは23花をつけていたものもあり、今回調べた2個のホソバオオアマナは7花と19花でした。
花の時期にはどちらも上から見ると似ていますが、花が終わる頃にはホソバオオアマナは果柄の長さにあまり差がなく、オオアマナは下の方が上のものよりはるかに長いという違いがはっきりしてきました。

(2006.6.4  2010.5.3一部訂正)