歩き始めて40日がたった。寒くて食欲もないままペンションのベッドに座っている私。私の40日はなんだったのか?なんでもなかった、なにもなかった。今私は夕方5時のバスに乗るためにじっと待っているだけ。無為、孤独。村の真ん中へゆく。バールの窓から外を眺めていると、霧雨の中雨具をつけて巡礼者がぞろぞろどんどん歩いてゆく。私はあんなに元気ではなくバスを使うのです。私は弱いのです。精神的にも軟弱であり安逸に流れ贅沢なのです。私はどんどん心を閉じて何もできないのです。小さくて弱くて力失せて。
小さな教会は横の扉が道路に面していて開いたままになっている。ちょっと座りに行く。40日目、意味深なこの日に神様は私に私の弱さを示してくださるのか。こんなに弱いのか… どうしよう… どうしたらいいの… …今は…それを…受け止めよう、としか言えない。
40日目に私は『ばおばぶ』の良さにも目覚めている。スペインのカフェコンレチェは美味しい。しかし『ばおばぶ』のカフェオレの方が絶対に美味しい。『ばおばぶ』の精神性、優しさは個性だ。『ばおばぶ』の場を大切にしなければとしみじみと思った。
食事をし終わっても寒気がするので厚いフリースのコートを引っ張り出して着た。やっと5時になり来た小型バスは地元の人でいっぱい。乗り遅れてはすごく困るとあせっている私は皆が下りるのを待たずに乗り込んでいた。皆優しいから見守っているだけ。ほとんどの人が降りる場だったのだ。
山を大きく回って乗り換えをさせられ向こう側のサリアについたのは夜も十時ごろ。バス路から眺めるスペインはカミーノから見るのと違って、現代に生きる普通の人たちと普通の街にみえた。カミーノには中世の時間が流れていてこちら側とは別世界なのだ。
サリアのバスセンターに着いた時 雨も降り真っ暗で人っ子一人いないし どうしよう… 何の店だろうかと戸の開いている近くの店に入ったら出てきたその人がタクシーの運転手さんだった。街の中にも沢山アルベルゲがある、と教えてくれたけど案内書に出ていた一つに決めていた。街から離れどんどん山の方へ行くので心配になってきたころやっと着いた。3km。
暖炉のある食堂兼居間が天井も高くインテリアもセンスが良くて芸術的で新しいのに居心地がいい。部屋は八人部屋だが洗面所が専用にあってゆったりと機能的だ。暖炉の周りでくつろいでいたドイツ人のおば様たちが私を知っていて優しく迎えてくれた。