カストロフェリッツは2kmの細長い街。古城の遺跡のある山の下腹のほうに三本の道が平行に高さを違えて伸びている。街の入り口のマリア教会のすぐお向かいにカフェがあった。ホステルでもある。タクシーはそこで止まった。心地良い部屋で久しぶりの個室か!と喜んだが甘い。すぐ後に来たドイツ人が相部屋を望んだので、そのほうが安くもなるのでOKした。ブリギッテという気さくな人。
2km先の街の端っこにある教会でホステルのオーナーの甥っ子の初聖体の式があると聞いたので車で連れて行ってもらうことにした。街中の人がいるのではないかというくらい混んでいた。初聖体の子供たちはうれしそうだ。帰りは街を見たくて歩いた。中世から変わってないのか?ぐらいに古い。街の真ん中へんの広場ですごくにこやかなおじいさんに出会った。君は日本人か?ここには日本人がいるよ、と手をとって連れて行ってくれた。広場の上にあるアルベルゲのホスピタレーロが日本人だった。
ヒデという五十歳ぐらいの人。カミーノで始めて日本人をみた。一瞬探るような目をしたようだったが海外での生活が長い人らしい空気を持っていた。亡くなったスペイン人の友達の後を継いでここを引き受けたらしい。
ヒデのおかげで日本語で的確な情報が入った。医者はすぐ目の前にあり11時からだと。明日はこちらに移ることにした。
夕食をブリギッテとキャンプ場のレストランで取っていたら雨が降ってきた。久しぶりの大雨。洗濯物は誰かが屋根の下に移動しておいてくれてるとは思うけど、窓が開けっ放し!すぐ止む、私がぬれるはずはないと思っていたがなかなか止まぬ。キッチンでゴミ袋をもらい穴を開けてかぶって帰ろうとしたらキャンプ場の入り口に着くか着かないくらいで雨はあっけないほどピタッと止んだ。すばらしい虹がでた。
やっと医者に出会えた。緑色のアクセサリーが目立つサッパリした女医さん。塗り薬と飲み薬と締め付ける靴下を処方してくれて一日十キロ以上歩くなと。無料。
昨日のにこやかなおじいさんはお店を持っていた。なるほど。カミーノで必要な物は何でもそろっていた。今まで何処にもありそうでなかった店だ。彼自身何度も歩いたことがあるので何が必要か分かっていて品物がとても良い。出発前には見当がつかなかったが今や私も体験者なので何が欲しいかははっきりしている。本格的な大きなポンチョ、しっかりしたサンダル、小さなナイフを買った。十字架をくれた。
ヒデとおしゃべりをした。マザーテレサのところで働いていたこと、エチオピアの同じようなところで働いていた事、そういうところに来る世界中からの若い医者とか、カミーノに来る若い人たちの多くがモラルに欠けているとかなり批判的だった。
長い午後をヒデ、マジョルカ島からのお兄さん、ドイツのおばさん達、ブラジルから来た日系の若い女の子二人等と入り口横のテーブルで過ごす。良い天気だ。マジョルカのお兄さんはどんな痛みにも効くという『タイガーバーム』を貸してくれた。懐かしい東洋のにおいのする軟膏だ。
何故カミーノに来たのか、という質問はお互い知りたいところでよく聞かれるし私も聞く。
*ともかく突然いきたくなった
*カトリックだ
*スピリチュアルに成長したい
*亡き夫、娘のために
*修行? 休暇?
大体こんな感じで適当に答えてきた。他の人も似たり寄ったりだ。スポーツ、観光としての人も多い。しかしスポーツとして歩き始めてもここでは歩き終わるころには巡礼者になる、という話もある。
出会うのもこれっきりであろうと思われる人達と世間話のように心の奥のほうまで話してしまったりする。これはカミーノだからだろう。自分のためにやっていることなのだ。
一期一会。
『偶然はない』と私が言ったらマザーテレサの言葉にも同じのがあるとヒデがいった。