前のほうに犬を連れた若い女の子が一人で歩いていた。何かを落とした。声が届かないのでそこに着いた時に拾って(赤い毛糸のぼんぼん)後を追った。しばらくして気がついたらしく立ち止まって後ろを振り向いた。
やっとスポーツウエアでない人に会えた。幅広のぴらぴらズボンで真っ赤なスパッツをみせカラフルな麦藁帽子とざっくりしたカーデガン。金髪をなびかせて。自分のファッションが楽しそう。ほとんどの人はスリーパーツに別れるズボンでスポーツウエアそのものという味気なさなので。
彼女はスイス人だった。それもチューリッヒの出だったので話は弾んだ。昔チューリッヒに6年程住んだことがある。我が青春時代なのだ。タマラ、という名は珍しい。お母さんはユーゴスラビアの人だと。犬はリュネ。フランスのトゥールーズからもう一ヶ月以上も歩いていると言う。フランス国内は道の経験者の彼氏が一緒に歩いてくれたけど今は犬と二人、犬は日差しに弱いので曇りの日に余計に歩く。赤いボンボンは友達からのプレゼントで大切なもの。その友は私が昔住んでいた町の住人だ。私がこの旅の最後に訪れようと思っているウルスラの村の近くに、彼女のお父さんは別荘を持っているとか。チューリッヒに近いスイスアルプスだ。
ピレネーは今まで大変な嵐の体験談しか聞いてなかったけど、一日違いの私の良い話が聴けてうれしいという。今日は歩きすぎたかなと思っていたが彼女にあえたのでよかったと感じていたら、彼女も今日はあなたに会えてよかった、と言ってくれた。
クワトロフォルクという宿は四どころか五ヶ国語をほとんどパーフェクトに話す親父がやっていた。韓国のチョンミンさんとリーさんとソン君も同じ宿。ソン君はまだ良い靴が見つからない。チョンミンさんとリーさんはヨーロッパは初めて。ビデがなんだか分からないというので説明してあげた。二人はテレビ局と製薬会社で働いている。彼らと同じテーブルについたが、韓国の食事文化が強いと感じた。食事はかなり美味しくて楽しかった。材料は変わらないのだけれど作り方なのか。
南アフリカのデイビッド君が隣のベッドで大きな身体をもてあましていた。礼儀正しい若者。
ロレーヌとその彼に街の中で出合った。寒いのでセーターを買ってきたところだった。真っ赤なきれいな色のそれを見せてくれた。ともかく寒い。スペインの4月とは思えない。
ベロラードの教会での夜のミサはジージャンを着ていた神父さんだった。ミサの後に聖堂内のコーナーに巡礼者を集めてなんだか内容はよく分からなかったが熱っぽく話してくれた。こんな風に集い共に祈ることは初めてだった。