山のあなたから朝日が昇る。朝の体操を終え歩きだそうと振り向いた西の空に月が淡く見えた。春の野にかかる太陽と月。
ヴィアナまで11km。今日はこれでよし。オーラに又出会った。今日はホテルにする、と言っていた。少々疲れているようだ。アルベルゲの生活は改めて考えてみればかなりきつい。しかし長い道中、贅沢は出来ない事もあるし、この共同生活も巡礼の一部だと受け取っている。
バスク人、カナダ人、韓国人達とアルベルゲの開くまで扉の前で待っていた。お向かいの遺跡の天辺にコウノトリが巣を作っていた。
フランスパンの大きいままのサンドイッチをボッカディーリョという。でか口、と言う意味らしい。これがシンプルだけどすごく美味い。ケソ(チーズ)かチョリソーか生ハムと新鮮なパン。バターもサラダもなし(長持ちする)グワッと味わえる。私の発明でオイルサルディーンも美味い。朝歩き出してから、見つけたところで焼きたてのパンを手に入れ、チーズ、オレンジ、りんご、パプリカ、水と確保できればその日一日は夕方まで生き延びられる。巡礼に出る前私は"ばおばぶ"の玄米雑穀おにぎりが大好物で、スペインに行ったらどうしたらいいんだろう、と心配してたのだがパンがこんなに美味しくて幸せだ。
この街にはスーパーマーケットがあるではないか。他の店もある。絵葉書や切手も買える!すごい。切手はタバコ屋さんにあるらしく通りかかったおじさんのグループが私を店まで案内してくれた。我々の行列をロレーヌが上の道から眺めて笑っていた。
かなり病気が進んでいるのだろうか? ロレーヌはケベックの人で透き通るような白い笑顔が優しくて美しい。旦那も見るからにいい男で、彼は歩きで彼女はバスで移動し宿で待ち合わせる、という巡礼をしている。
ここのベッドは三段だ。食堂は大きい、キッチンも大きい、昔修道院の病院だったようだ。
食堂で韓国人の若いソン君と話す。英語の発音でお互いドイツ語が話せると分かり楽なほうにした。ドイツの大学に通っている。端正な美形。靴があわないらしい。彼は私が歩いた翌日ピレネーを越えて嵐にあったらしい。雪と雨とあられと強風で四人の怪我人(強風で飛ばされ骨折)が出て道は封鎖となったそうだ。リュックの中身はもちろん身体の芯までずぶぬれ。寝袋もぬれていて夜は冷たくて眠れずもう死ぬかと思ったと、何日か後にサングラスのケースから水がこぼれたと。
たった一日の差で・・・・!!!
大きな町の教会ではミサが毎日夕方に行われているらしい。今日のミサはお葬式だった。黒い服装がほとんどなくて、家族だと思われる人のショッキングピンクの上着には驚いた。教会内の装飾が豪奢で金ぴかだが、大空間なのでそれなりに美しい。祭壇の真ん中にマグダラのマリア像があり、キリストの十字架像が左側に飾ってあったのもちょっと楽しい。スペイン人は像が好きらしい。たくさんある。
カトリック教会は世界中どこでもまったく同じようにミサが立てられている。どこででも安心して参列できるのだ。異邦人がいようがいまいが誰も何も言わぬ。世界で一番大きな企業のような感じがしてきた。