巡礼の出発地、サン・ジャン・ピエ・ド・ポオ駅に着く。何の案内もなく静かな住宅街。汽車を降りた巡礼者たちと共に古い街のある中心のほうへ向かい巡礼事務所を探した。路に面してない奥の建物で分かりにくい。並んで登録をして巡礼パスポートと資料をいただく。街の狭い通りにはこじんまりとお土産屋が何軒か並んでいた。下にきれいな水がとうとうと流れている橋を渡りいよいよ道が始まる。
乗換駅で英語もフランス語も分からなくて困っていたデュッセルドルフからの老夫婦(パリでみかけた)といっしょに歩き始める。来る前にあちこちたくさん歩いてトレーニングをしてきたらしい。農業なので今は暇な時期とか。信じられないがサンダル履きだ。これが一番だと。8km先のオリソン巡礼宿まできつい登り。休憩でデュッセルドルフ製の菓子パンの甘さが元気をくれた。もうこの道にそんな宿はないのではないか、と絶望がよぎった頃、角を曲がったら山小屋が見えた。
フランス側の山並みがパノラマのように拡がる宿のテラスでカナダのケベックから来たというマリーとリリーと仲良しになる。彼らの友人に私に似た感じの人がいるらしい。少し年下で”山椒は小粒・・・”の感じ。
なんと穏やかな日差し、なんと静かな時間だ。空気がシーンといっている。スイスでの昔の生活、わが青春を思い出す。
あれがあったからこうなった、というより、そのようにしか選択できなかった私がいたということか。やはり私はこの人生を演じてくるしかなかったのだろうか?
「カフェギャラリーばおばぶ」(私のカフェ)宛てに絵葉書を書き始める。4人のスタッフに任せてある。連絡方法として唯一絵葉書だけ。携帯とかいうものは持ったことがないので今回も無し。息子の勧めでホットメールとかの登録はしておいた。
大家族のように20人ぐらいの巡礼者達で大テーブルを囲み夕食。誕生日のフランス人がいてお祝い気分。ワインのボトルがメニューについている(この後どこでもワイン付きだったが私は水しか飲まない)私は「本当の」日本人ではない、というようなことを言ってしまって皆を楽しませ私も笑い転げた。「典型的な」といえばよかったのだが、間違った。右隣ドイツ語、左隣フランス語、お向かい英語と 早速言語のミックスサラダを味わう。
六人部屋、二段ベッド、男女混合にはちょっとびっくり。マリーたち二人、ドイツ人の背の高い元気なおじさん二人、スイスの太ったおばあさん、と私。夜中にすごい音で目が覚めた。いびきだった。朝まで変化球で続いた。