12AX7とその改良管

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工事中、オリジナル資料確認中のため、一部内容が変わることがあります。

12AX7は、最初の9ピンMT12AU7に続いて、1947年にRCAから発表されました。ほぼ同じ頃、1946年にPhilips1947年にMAZDA / Mullardのリムロック(B8A)が発表されその中には、中増幅率双三極管ECC40が含まれていました。次年に発行されたRCAの真空管マニュアル(1948, RC-15日本語版)には、12AX7は「ラジオ機器における位相反転あるいは抵抗結合増幅用のミニエチュア管で、工業上の制御装置としてマルチ・バイブレーターや発振器のような多種多様の応用がある。ノーバル9極ソケットを用いどんな位置にでも取り付けられる。特性はガラス・オクタル管6SL7GTと同じである。」と紹介されています。 面白いことに同特性の6AV6は付録の新製品紹介の方に出ています。つまり、6AV612AX7よりほんの少しですが後に発売されたことがわかります。

12AX7は、以前の6SL7GTなどのGT管にくらべ、電極が小型化されたため、しっかり保持できてマイクロフォニックが激減し、業務用途やマイク増幅やLPプリアンプ用の初段管としての適性が増したことにより、その後、業務用、民生用として一般に広く使われることとなり、多くのバリエーションを生み発展しました。

12AX7の直系では、まず民生・家庭用、Hi-Fi用として雑音・ハムを減らしたRCA12AX7A, 7025、ヨーロッパでは、Philips / MullardECC83MAZDA6L13Marconi / GECB339があります。また、6.3V専用の12AX7A相当Hi-Fi6EU7GEから、ヒーターを太くしてハムを減らした12AD7Sylvania / Tung-Solから発表されました。ヒーター電圧の違うものに6AX7, 100mAトランスレス用の20EZ7があります。

一方、航空機、軍用、コンピューター用の高信頼管として、GEから堅牢構造Reliable Tube5751, 5751WA, 12AX7WA、移動機器用に堅牢化され、ヒーターは蓄電池動作のため許容電圧範囲が広い、Sylvania 6681, RCA 7058CBS / HytronInstrument Quality 7729、航空・ミサイル用の5751相当の硬質ガラス管Bendix 6851があります。 一方、ヨーロッパでは、英国BrimarからTrustworthy Valveとして6057Philips / SiemensSpecial Quality Premium TubeとしてE83CC、フレームグリッドとしてさらにマイクロフォニックを減らしたLorenz(SEL)ECC803、同様構造のTelefunken ECC803S、フランスMAZDA / CSF12AX7S、大きな角型プレートのMullard M8137Marconi / GECSQQB339、更にBrimarでは6057SMT管のような半田付けできる長いリード構造(Flying Leads)にしたCV4035も作っていました。英国のCV No.は、CV492,CV4004(M8137),CV4017(5751),CV8156,CV8222,CV8312,CV10319があります。

12AX7を改良した、少し変わったところでは、ヒーターの中点を無くし、両ユニット間にシールドを設けた6.3V専用のMullardECC83MTesla6CC41、旧ソ連の短い箱型プレートの6H2П、12.6V専用のTung-Sol 12AK7があります。さらにそれにヒーター・グリッドシールドを加えハムを減らしたValvoECC808、さらに加えてフレームグリッドにしてマイクロフォニックを減らし低雑音化した球が、Siemens E283CC, RFT ECC863です。 E283CCは、ECC808ECC803Sを組み合わせた様な豪華な低雑音管です。

12AX7は国内でも、Hi-Fi用、通信用(通測用)、工業用などの他に、松下電器のHi-Fi管、12AX7(T)、東芝の直流増幅、心電図測定用など特殊用途の選抜管M3122, M3689, M3689(S)が出されていました。

12AX7から少し離れますが、超低周波平衡増幅・直流増幅用のWE 420A / 5755, NEC5R-HH5, 12R-HH14も仲間に加えましょう。

電気特性が同じ球では、まず、7ピンMTで双二極管付きの6AV6、三極管のみの6DR4、コンパクトロンでは、3ユニット入りの6C102ユニット入りの6BK11, 6K11, 6Q11も仲間です。

航空機用GT管の2C52も仲間に入れましょう。更にSMT管の5719、セラミック管の7625, 8081も仲間に入れて!といっていますが・・・。

以下に、各々の詳細を説明していきたいと思います。

12AX7/12AX7A

12AX7Aは、1960年頃RCAから発表されました。このAの意味は、TVのトランスレス管のAのヒーターウォームアップ時間の管理とは異なり、Low-hum, non-microphonic特性のオーディオ用という意味で, 雑音とハムがグリッド入力換算値(平均値=1.8μV)で規定されています。7025, 6EU7, 12AD7も同様な規定が有ります。また最大定格もグレードアップされ、ヒーター・カソード間耐電圧は、12AX7は±180Vですが、12AX7Aでは、ピーク±200V、平均100Vとなっています。最高プレート電圧は300V330V、最大プレート損失は1.0W1.2W、最高グリッド負電圧は-50V-55Vに増強?されています。

M3122/12AX7A(東芝)

M3122/12AX7Aは、1960年代に東芝で作られた直流増幅用として12AX7Aの通信測定器用(Hi-S)選抜球で、両ユニット間のバランスが良く、平衡増幅で長時間の安定化により直流レベルでの変動が少ない球です。

M3689(S)/12AX7A(東芝)

M3689/12AX7Aは1960年代前半に東芝で作られた脳波計2段目、心電計用の12AX7Aの通信測定器用(Hi-S)選抜球で雑音レベルの低いのが特徴です。 M3689(S)/12AX7Aは脳波計初段用に特に選抜した超低雑音管です。

 

12AX7(T)

松下電器の12AX7(T)では、スプリングマイカの使用の他に、コイルヒーターですが「従来のHi-Fi管より、カソードスリーブを長くしてヒータ・グリッド間をシールドし、ヒータ・グリッド間静電結合による、ハムを防止しています。」と有ります。ばらつきやすく作りにくいダブルヘリカルを避け、同社では実績のあるコイルヒーターを使いカソードスリーブを伸ばすという小改良で、価格を上げることなく高性能化したのは日本らしくさすがです。後にNECでも作られました。最盛期の松下電器製12AX7(T)は、一般用途のオーディオ管としてはもっとも品質の高い球の一つでしょう。

 

6EU7

1960年頃、GEが、ローノイズ、高性能な中価格のオーディオプリアンプ用として開発しました。ダブルヘリカルヒーターを採用し、6.3V専用としてベースレイアウトを換え、ヒーターを3,4,9ピンから1,2に移動し、グリッドと離して誘導ハムを極力減らすようになっています。また、ステレオ2チャンネルの初段を想定した、1,26,7ピン間を中心とする対称配置になっています。電極構造は、5751に近く12AX7に比べ短くしっかりした構造で、マイクロフォニックを減らしています。日本では東芝が作っています。

12AD7

12.6/6.3V, 0.225/0.45A

 

20EZ7 (Mullardブランド RCA)

RCAが1960年頃開発した小型化、高能率化、キャビネット内の低温化をセールスポイントとした100mA,120Vのトランスレスシリーズ(18FW6,18FX6,18FY6,20EQ7,20EZ7,34GD5,36AM3-A,50FK5,60FX5)の球で、低価格のステレオ用として開発されました。ピン配置の改良でステレオ使用時のチャンネルアイソレーションが良好になっています。使用例として、3球ステレオ: 20EZ7, 50FK5×2、4球ステレオ:20EZ7, 34GD5×2, 36AM3-Aがあります。さらに、出力管のカソード電流で直流点火していた米国メーカーアンプもありました。ヒーターは、20V0.1A/10V0.2Aでピン接続は12AX7とは異なり、6EU7とほぼ同じですが、6EU7ではNCの3番ピンがヒーターの中点になっています。プレートは6EU7と異なり12AX7と同じ形です。

5751

 

5751は、第二次大戦後、米国の民間航空の要請により検討されたARINC Seriesの堅牢構造の高信頼管(Reliable Tube)としてGE1949年頃発表した球で、基本的には、12AX7そのものの高信頼管ではなく、増幅率とヒーターが異なります(μ=70, Ih=0.175/0.35A)。最高プレート電圧は330Vですが、最大プレート損失は0.8W(A.V.)と少し小さくなっています。仲間の5814はすぐにコンピューター定格の5814Aになりましたが、スイッチングには向かない57515751Aにはなりませんでした。耐ショック(衝撃加速度:600maxG)、耐機械疲労(振動加速度:2.5maxG / 25Hz /32時間)、ヒーターのon/offサイクル寿命(Eh=7.5V, Eh-k=+100V2000回断続)と低周波振動時の雑音(2.5G/25Hzを加えたとき100mV以下) が規定されています。上の写真は、当時GE5starと競ったRCAの"COMMAND"シリーズ575112AX7と同じプレート形状が珍しい1951年製Tung-Sol 5751

5721

5751の同等管としていろいろな規格表にでてきますが、詳細情報はありません。米国管で5721を調べるとRaytheonのレフレックスクライストロンQK205がでてきます。重複登録は考えにくいので、極特殊な球もしくは欧州管か、5751の間違えの可能性が高いと思われます。詳細をご存じの方はお知らせ下さい。

6681

6681は、主に3セル鉛畜電池で動作する車載移動通信機器用(6660-6681)の12AX7同等管で、Sylvaniaの設計と思われます。違いはヒーター電圧が±20%が許容されていることと、最大プレート損失が1.1Wになっていることです。また、ヒーターのon/offサイクル寿命(Eh=15V, Eh-k=+135V1分間隔で 2000回断続後、ヒーター切れ、ヒーター・カソード短絡なし)と低周波振動時の雑音(2.5G/25Hzを加えたとき100mV以下) が規定されています。

6851

Bendix社が航空機、ミサイル、ロケットなどのために開発したHY-G-300シリーズの硬質ガラス耐熱耐震管です。300, 200Gに耐えるように設計されています。中身は高信頼管5751と同等ですが、ヒーターが0.5Aに増強されています。Bendix type No.TE-42です。絶縁にはセラミック板を用い、WEの球と同じようにセラミック絶縁管に入ったコイルヒーターが使われ、グリッドは金メッキがされています。ベースピンも金メッキされています。シリーズの電圧増幅用双三極管としてはこのほかに、6854(2C51,5670,6385同等Ih=0.5A), 6900(5687同等Ih=0.9A)があります。

7025

1959年頃RCAで開発された、ハイゲイン、抵抗結合のプリアンプ専用としてRCAが開発した、特にノイズとハムを低く制御した球です(平均値=1.8μV、最大(カソードバイパスなし)= 7μV)12AX7Aの選別球と思われていますが、初期(1960年頃)RCAの広告では、ヘヤピンタイプのコイルヒーターを採用しハムを最小化し、ステムリードを短く、しっかり固定し、太いグリッド支柱と特別設計のマイカでマイクロフォニックノイズを減らしています。実物を見たところでは、プレート形状などは12AX7Aと同じでしたが、ヘヤピン型ヒーターが1回折り返しのコイルヒーターになり、上部のマイカが厚く、ステムのリードがマイカに当たるようにしてありました。グリッド支柱は見た目にはわかりませんでした。日本では、RCAと技術提携していた日立が作っていました。

7058

7058は、RCA1960頃開発した6セル鉛蓄電池を電源とする車載移動通信機器用(7054-7061)の球で、ヒーターは12V15Vの変化に対応し、11V16Vまでの範囲で動作可能です。また、プレート損失は、エンジンのクルージング状態から、アイドリング状態に対応するため、余裕を持たせてあります。ヒーターの規格が異なりEh = 12-15V, Ih = 0.155A(0.143min - 0.167maxA / 13.5V)ですが、実測では12AX7Aとまったく同じでした。ピン接続が異なり(9EP)9番ピンが内部接続有り(IC)になっています。しかし、実物ではヒーター中点のものと無接続のものが有りました。ヒーター中点が接続されているものは、ほぼ12AX7Aと同じ扱いができると思います。ヒーターは暗灰色でまた、高信頼管に準拠したヒーターのon/offサイクル寿命(Eh=17V2000回でヒーター切れ、ヒーター・カソード短絡なし)と低周波振動時の雑音(2.5G/25Hzを加えたとき150mV以下)および断続寿命試験(Eh=15V、最大プレート損失で500時間)が規定されています。

7494

1961年頃、Sylvaniaが作った12AX7WAの同等管とされています。詳細をご存じの方はお知らせ下さい。

7729

CBS(Hytron)が開発した業務用高品質管で、軍用管(Military Reliability)に対し、産業機器や放送、医療、原子力機器、PAなどのために個々の要求に応じた特性を制御・規定し、安定動作と長寿命を保証した球で 、”Instrument Quality”と銘打った7728(12AT7), 7729(12AX7), 7730(12AU7), 7731(6U8), 7732(6CB6), 7733(12BY7A)のシリーズの球の一つです。ベースピンは金メッキがされており、コイルヒーターで、構造も堅牢化されています。10,000時間の寿命を保証し、精密機器の交換用途では、1ドル当たりの最高のパフォーマンスを示す球であると宣伝していました。

 

ECC83 (RSD)

旧東ドイツのDDR-Rohrenwerke(RFT)の製造と思われ、その特徴は、ステムリードが赤い銅色をしていること、内部にロットと思われる数字が刻印された小さい四角い金属板がプレートなどに溶接されていることなどです。

ECC808 (Valvo, Telefunken)

1963年頃ドイツValvo社が開発したオーディオ専用管で、米国名6KX8で、6GW8の三極管部を2個入れたような(構造・規格がほとんど同じ!)双三極管です。この球の特徴は、厳重なヒーター・グリッド間シールドが付けられているで、ヒーター・グリッド間容量は、12AX7(0.15pF)1/250.006pF以下まで下げられています。これは同様なシールドが付いたE283CC(1:0.01pF, 2:0.02pF)よりも小さく、EF86,EF806S,62670.0025pFEF804,EF804S,E80F0.002pFに次ぐものです。両ユニット間のシールドもしっかりしてあります。ピン配置は独特で、5ピンを中心にした対称配置で6番ピンはシールドです。,ヒーターは6.3V専用で0.34Aです。初段専用としマイクロフォニックを減らすため、プレートは12AX7の縦1/2にされているので、最大プレート損失も半分の0.5Wになっています。また、カソード電流の最大値も4mAと小さくなっています。ヒーター・カソード間耐圧も最大100Vとやや低いので注意してください。Telefunkenの一体型ステレオに良く使われており、かの五味先生宅のTelefunken製ステレオセットにも使われていたそうです。

 

ECC803S (Telefunken)

E83CC (Siemens)

 

6057 (BRIMAR)

Brimarが開発したイギリスを代表する高信頼管で、管壁にはTrustworthy Valveの頭文字のTが誇らしげにステッカーとして張られています。プレートは一定方向に振動し共振しないようにマイカへの固定タブが90度ずれるようにした結果、フィンが片側になっています。

 

E283CC (SIEMENS)

この球は、 SiemensValvoしか作られなかったようで、また米国名も無く、価格が非常に高かったため(1975年頃、正規に輸入すると2万円近くもした。ちなみにTelefunken ECC83980円、ECC803Sが約5,000円の頃)、発売当時はほとんど輸入されず、日本でも作られなかったため、ほとんど知られていません。しかし非常に優秀な球で、主にドイツの放送機器と医療機器に使われた業務用の球です。

三極管としての特性は、12AX7と同じですが、この球の特徴は、金メッキされたフレームグリッドと、EF86,ECC808と同じような誘導ハム防止用ヒーターシールドがつけられていることです。そのためヒーター・グリッド間容量(Cg-f)は、12AX70.15pFに対し、第一ユニットは0.01pF、第二ユニットは0.02pFと約1/10になっています。両ユニット間にシールドを設け、隔離も非常に良くなっていますが、出力容量(Ca)2pFで約6倍になっています。ピン接続は、単球2段増幅も考えられていたようで、全く他の球と違い互換性はありません第一ユニットを初段に使うように指示されています。ヒーターは、6.3V専用で、電流は0.33A、最大定格は、プレート損失:1.2W、プレート電圧:330V、カソード電流:9mA、負グリッド電圧:-55V、ヒーター・カソード間耐圧:200Vです。同様なフレームグリッドの低マイクロフォニック管E188CCに見られるカソードを押さえるスプリングマイカはありません。

最近日本の市場で見るのは、放送局のストックの払い下げ品が多いようです。続く

 

 

E283CC (N.E. 中国製を使った偽物)

中国製の12AX7の足を短く切り基板によりピン接続変換をしています。凝った作り?です。

 

超低周波、直流増幅用の仲間

この仲間は、カソードをしっかり固定してマイクロフォニックを少なくし、グリッドの絶縁を高め、グリッド電流が極端に少なく高いグリッド抵抗が使えるようにしてあります。比較的低電圧で極端に少ないプレート電流で動作させますが、普通の条件でも動作するようです。カソードを押さえるスプリングマイカには、2つの効果があります。まず、カソードの振動、熱による移動を押さえ、マイクロフォニックを低減させます。その他に、カソード上端部にふたをして、ヒーターからの熱電子放出を押さえる効果もあります。更に、WE 420Aなどでは、よりしっかりカソードを押さえるため、2本の金属ばねで垂直・水平方向から圧力をかけています。

5R-HH5 (TEN)

 

WE-420A/5755 (WE)

 

12R-HH14 (NEC)

電極構造はWE420A5755とほとんど同じですが、ピン接続は12AX7/5751と同じです。続く

 

工事中、続く。

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平成10年4月12日  ペ−ジ制作:が−

平成11年2月20日  改正