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6月の真空管
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その壱 D11F
直熱型の可変増幅率5極電池管で有名なドイツのV2号ロケットに使用されていた物です。


規格は、Ef : 1.4V, If : 0.1A, Ep : 150V, Ip : 3mA, Esg : 50V, Isg : 1mA,Eg1 : -1.5V, Rp : 500kΩ, S : 1.8mA/V, μ : 900 .
仲間の多くはロケット本体と共にロンドンで戦死し、戦後はこの形式の物はドイツでは作られなかった様で、あまり知られていない球の一つでしょう。この球がV2号ロケットのどこに使われていたか、調べて見ましたが、まだ判っていません。高周波用なので多分、無線制御の受信部に使われていたと思われますが、RV12P2000の様に万能管として複数が使われていたかもしれません。しかしV2号ロケットの資料はアメリカやソ連(ロシア)に接収され、その後の自国のロケット開発のため極秘となってしまい、殆ど明らかにされていません。今後の情報公開を期待しています。
写真のサンプルはドイツのValvo社製です。原型はPhilips系のD1FでDF11(Telefunken系メタル管)の特殊用途改良管ではありません(ヨーロッパ受信管命名法:DはEf≦1.4V、Fは5極管、最初の1は特殊ベース(初期はサイドコンタクト)を示し、DF1→D1Fの様に順番を変えると特殊用途管になります、しかしこの場合はDF1はシャープカットオフ5極管で、D1Fは最初から特殊管として作られた様で、区別のため番号を変えD11Fとしたと思います)。D1Fは下部にある排気封入部を覆うように→型のやや大きな金属製着脱用つまみが付いています。これは米国系のエーコン管と異なりシャシーに埋め込まれた筒状のソケット逆立ちして挿入するためです。ところがD11Fにはこのつまみが省かれています。つまり一度ロケットに乗せたらはずす必要はなかったためだと思います。この球はRV12P2000などドイツ軍用管の原型の一つと思われますが、着脱用つまみがねじではずれる物が多く、何となく当時のドイツの非情さを感じます。外形は米国系のエーコン管に似ていますが、954、959の様に上下にピンはなく、管壁から放射状にピンが7本出ています。配置も米国系7ピンエーコン管の6F4や6L4とも異なります。表面は亜鉛やアルミを含んだ導電性塗料で全体をスプレーシールドされています。スプレーシールドは内部シールドと一緒にフィラメントやサプレッサグリッドとは別に単独のピンに引き出されています。
電気的特性は素晴らしい物で、電池管としてはややプレート電圧が高いですが、相互コンダクタンスは1.8mA/Vもあり、内部抵抗も500kΩと十分高い値を保っています。さらにエーコン管のような当時の超小型管ではバリミュー特性を得るのは困難で、傍熱型の956でさえ日本では殆ど作られず、米国でも電池管959のバリミューバージョンはありません。可変ピッチの微細グリッド作成技術などではヨーロッパの方が進んでいたと思います。グリッド電圧を-1.5Vから-11Vに変化させると相互コンダクタンスは1.8mA/Vから0.018mA/Vまで下がり、内部抵抗が十分高いので増幅率では約100倍の可変領域があります。
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平成9年6月 ペ−ジ制作:が−