城駿一郎「神保鏡四郎事件控」シリーズ(既刊5冊、廣済堂文庫)
※書評は2巻まで。
旗本の四男坊、神保鏡四郎(じんぼ・きょうしろう)が主人公の時代(劇)小説です。
作者が時代劇の脚本を多く手がけてきただけに、時代劇を文字に起こしただけの作品が仕上がってしまったようで。
好みが分かれるとは思いますが、個人的には好きではないです。
いや、実を書くと人物設定も人物の性格も時代考証も、むしろ作品全体、作者ごと嫌いなんですが。
つーか、ここまで酷評したらヤヴァそうだな……。
第1巻「鏡四郎活殺剣」(2002)
粗筋からして誤植があって、非常に不安な気分にしてくれます。
なんと、将軍以外の全ての人物が架空という奇妙な作品です。
柳沢吉保が出ない元禄時代って……。
丼の無い牛丼っていうか。
元禄時代という背景(丼)を丸投げして、展開(肉+飯)だけで読ませている印象があります。
肉と飯だけが載ったトレーを見て何とも思わないなら……。
その肉と飯も上質とは言い難いですが。
時代考証について
元禄時代とか言いつつ鱧とか泥鰌とか喰っていた気が(汗
あと、株仲間が登場しますが、元禄時代は株仲間が認められていません。
せめて高校の教科書に載っていることぐらい踏まえようや。
つーか、本当に時代劇の脚本を書いていたのだろうか?
更に細かく指摘すれば、五代将軍綱吉は日光社参をしていません。
※『莫大な費用と人手をともなうので、4代徳川家綱以降は 8代吉宗、10代家治、12代家慶に各1回が記録されているにすぎない。』
(ネットで百科@Homeの『日光社参』の項を参照)
いっそのこと開き直って平行世界の江戸時代として読むとか。
はっきり言ってテキトー過ぎ。エンターテインメントにリアリティは必要ないのかよ。
これを時代小説として薦める香具師いたら本気で引きますよ俺。
文章表現について
平常文に突然登場人物の述懐が混じるのに激しい違和感がある以外、特に問題はありません。
殺陣シーンも迫力皆無というほどではねーです。
でも掛け声orシャウトとしての「鋭」「応」は好みが分かれると思います。
内容について
舞台は西暦1695年。
将軍家に滅ぼされた忍びの一族が復讐する、という粗筋です。
露骨なエロが無ければマシになっていたかもしれない……。
将軍襲撃作戦を完璧にするために女頭領が部下を誘惑しなきゃならない展開ってどうよ?
上下関係にそれほどの人心乖離があるなら、別の道を見出したほうがいいのとちゃうんかと。
で、その襲撃を人知れず防ごうとするのが主人公の神保鏡四郎。
あと彼の情婦で一般人の京香とか(やけにモダンな名前だな……)。
どの登場人物にも言えることですが、人物同士に肉体関係があると生臭くなり過ぎる気がします。
淡い恋心とか、片思いとか、そういうの無いのな。
鏡四郎は叔父である大番頭・小日向采女(架空の人物、念の為)に将軍警護を依頼されます。
彼は忍び集団と、凄腕のガンナーにして正体不明の殺し屋“かけす”を相手にしなければなりません。
(´-`).o〇(何だか粗筋だけは面白そうだな……
次巻への伏線として“闇のご差配”というキーワードが出てきます。
更にツッコミ
・鏡四郎の乾分にあたる五助。せっかく活躍したんだからラストで触れてやれよと思う。
・命に関わる危険な任務を恋人に簡単に任せる(しかも成果に感謝するだけで詫びもしない)主人公ってどうよ?
・つーか任務の危険さを実行後に気付く京香の感覚って……。
要するに、メインの2人が直情径行型バカってことですかのぅ。感情移入できません。
……何だか過剰につまらなそうにレビューしてしまいましたが、大体こんなもんです。
あとは各自で読んで判断してください。
第2巻「暁の剣風 神保鏡四郎事件控」(2003)
粗筋を補足。
天馬一族による将軍襲撃事件から約半年。
悪の仕事人集団“闇のご差配”を独自に捜査していた幕府大番頭の小日向采女が横死した。
組織に消されたと見た甥の神保鏡四郎は、小日向家の用人・原田門三郎と、采女の弟で商人の大黒屋聡右衛門と協力し、“闇のご差配”に挑む。
一方、夫を殺された青柳志保は、下手人である堀田甚八と彼を雇った夫の同僚・久世慎之助を討つ機会を窺っていた。
やがて鏡四郎は志保と遭遇し、志保の仇討ちに協力することになる。
こんな感じです。たぶん。
読んでいて「この人ベタな展開好きだなー」と思ってしまう。
お約束過ぎるというか、露骨過ぎるというか……。
直情径行型純情バカが多い所為なのか?
目新しい展開が無い上に、同じ展開(主に情報獲得失敗)を3度くらい繰り返している気がします。
(書評書くために読み返し中……)
やべーよ、褒めるべき箇所が見つからねぇ……orz
「望みを果たせたら、私はあなたの奴隷になります」にハァハァしましたが何小説だソレ。
プライドばかりが高くて思慮が浅く詰めの甘い敵キャラが多いですね。
やはりこの作家共通の欠点です。
時代考証について
小柄は投げても刺さらないとよく聞くが……。相手の気勢を削ぐのが限度で縫い止めるのは無理と思われ。
まぁこの程度の間違いは先人も犯していたので酌量しますが。
この時代(元禄)の剣術には防具はほとんどありません。
だから「素面素籠手、しかも木剣で?」みたいな台詞が出てくる状況はNG。
※『江戸中期になって、直心影流の長沼四郎左衛門が正徳年間(1711-16) に、一刀流の中西忠蔵が宝暦年間(1751-64)にそれぞれ面、小手、胴などの防具や竹刀(しない)を考案し(後略)』
(ネットで百科@Homeの『剣道』の項を参照)
ついでに書くと、甲源一刀流は寛政年間〜。
後半で「社会」という単語が出ますが、……明治以後の言葉です。はい。
しゃ-かい【社会】 [近思録(治法)「郷民為社会」](societyの福地桜痴による訳語)――『広辞苑』第5版
……まぁ、元禄っぽい描写が微塵も無かったんで既にどーでもいいですが。
幕閣の架空じゃない人物も出てこないし、生類憐みの令は忘れられてるし、文化の爛熟を思わせる風俗も見られないし……。
文章表現
平常文に時折混じる登場人物の独白がウザ過ぎる……。
ついでにぐだぐだになるからエロ(゚听)イラネ
コメディタッチのエロは今時流行らないし、そういうのが書きたいなら別の出版社に言うべき。
容赦の無いツッコミ
・志保の初登場がオナヌーシーンってどうよ?
・主人公、例の性格(直情径行型バカ+楽観)の所為で志保に見限られているよ……。その後の志保の運命を思うと主人公に対する怒りが込み上げてくる。
・また恋人に危険な任務背負わせてるし……。人材少な過ぎ。
・その恋人に更なる危機を警告するために駆けつけるはずが、不審者として町奉行所に連行される主人公って……orz
・拙劣な殺陣シーンに武蔵や小次郎を引き合いに出すのは僭越にも程がある。書かないでそれとなく匂わせるのがプロじゃないのか。
レビューするのが苦痛になってきました……。
誰か読むかもしれないからフォローしなきゃ、とは思うのですが……。
ファンの人いたら本当にすいません。相性が悪かったんです。ごめんなさい。
俺、このシリーズ切ります。
reviewed by平沼兵庫