稲葉稔「八州廻り浪人奉行」シリーズ(既刊3冊、廣済堂文庫)
※書評は2巻まで。
凄腕の浪人、小室春斎(こむろ・しゅんさい)が八州廻り(関東取締出役、1805年成立)に抜擢され、江戸の外へ逃亡した悪人を退治する、という筋の話です(たぶん全編共通)。
殺陣シーンの迫力は充分なのですが、単なる「勧善懲悪もの」の枠を乗り越えられていない印象を受けました。
もっとスケールの大きい話に仕上げてくれれば、3巻以降の購買意欲も昂進したのですが……。
別のレビューでも書きましたが、「B級では決してないが、A級とも言い難い」という評価をつけています。
八州廻りの職制が把握できるのは有難いですが。
第1巻「八州廻り浪人奉行」(2003)
上記リンクの粗筋で間違いはないでしょう。
舞台は西暦1808年の夏〜秋。
徳川家斉とか松平定信とかの時代ですが、幕閣の中枢が事件に関わることは無いです。
謂わば、それが作品のスケールに歯止めをかけてしまっているのですが……。
主人公について
八州廻りの一人が消息を絶ったために、欠員補充で浪人身分から剣の腕で異例の抜擢をされた男。
その実力は、彼を試すために関東代官が用意した幕府指南役を負かすほど。
(幕府指南役の一人をひょいひょい出すものではないと思うが。)
彼の正体、というか父親の素性は本編で明かされる(別に秘密でも謎でもないですが……)ので省きますが、「春斎」という名(号?)の由来を初巻で特記してくれてよかったのでは。
取り敢えず第2巻まで読みましたが、名前の由来は記されていません。
……つーか、子供の頃からそんな名前だったのかよ。
悪人退治が相当お好きなようで、「他に考えること無いんか」とツッコミを入れたくなる。
内容について
賊の本拠地周辺で待ち伏せする間、暇を持て余して別の関係ない悪人退治をするかねぇ……。
相手の警戒を招くだけだし、ストーリーに一貫性を欠くようで、ちょっと引っかかるものがありました。
余計な事件に首突っ込み過ぎっていうか、お人好し過ぎるというか……。
しかもお人好しの癖に「安くはないぞ」って何さ。
……悪い人ではないのですが、何か引っかかる。
ただ、最終章の容赦ない展開はグッジョブ(何
文章表現について
特に首を捻る部分はありません。誤字脱字も微々たるもの。
殺陣シーンにページを割いている点は評価できる。つーかラストバトル燃え(何
細かいツッコミ
・寺田五右衛門→寺田五郎右衛門
第2巻「血煙 箱根越え」(2004)
今回は1808年の冬が舞台。前巻からほとんど間がねーですな。
何つーか、真冬です。寒そうです。季節感が表現できていて非常によいです。
これほど寒そうなのを読んだのは池宮彰一郎の「受城異聞記」以来か。
前半から容赦ない展開グッj(ry
賊に家族を皆殺しにされた姉妹、姉の恋人は賊の侵入の手引きをして逃走、妹の恋人の琉球使節は殺されてしまいます。
で、2人は届けもなしに殆ど着の身着のままで仇討ちの旅に出るわけでして。
賊を追ってやってきた主人公は彼女達にやきもきするばかり、という筋になっています。
もう少し彼女達が協力的だったら180ページ目くらいで終わるのですが(何
敵方の秀次さんがいい味を出しています。
狡賢くて、人を持ち上げるのが上手くて、強かに立ち回る人です。
つーか、親分格の辰五郎の血の気が多いだけの馬鹿ぶりが笑えます。秀次に操られていることに気付いてないしw
でも、秀次の思惑をも超越した元締・銀蔵の老獪さには恐れ入った。
そういう意味で、この巻は敵方の謀略合戦が見せ場になっているのではないかと。
もちろん殺陣シーンも燃え燃えですが。雪原バトルが熱いです。
しっかし、本当に春斎さんは悪人退治が好きですのぅ。今回もやってます。
そういう余計なちょっかいを出さなければ旅が捗ると思うのだが……。
この巻では琉球施設という珍しいネタが披露されています。
勉強になります。うむ(それだけかよ
そんな感じです。
reviewed by平沼兵庫