妄想駄文隔離場
兵庫が雑記に載せてきた小説もどき(基本的に未完)が隔離されてあります。
オリジナルと版権がごった煮になってます。
書く人いないでしょうけど、感想は掲示板かメールで。

第一話 は 欠番 です 。

第二話 は 欠番 です 。

第三話 は 欠番 です 。

第四話 は 欠番 です 。

第五話(20040417) 『荒野の孤闘』
「カーネルっ」
 男の渾身の右フックがサンダース人形の左頬を捉えた。
 減(め)り込む。
 ガスッ!
 左下方に回転しつつ、サンダース人形は無人の荒野にかっ飛んでいった。
「………」
 背後の信号機が気の抜けるメロディーを吐き出している。
 男は、もはや本来の用を為していない横断歩道を渡った。

第六話(20040513) 『極限周廻』
 灯台の中で男が一人、走っている。
「やめろおおおおっ。俺に光を当てるなあああっ」
 旋回する光は男を追い回す。男はそれから逃れようと輪を描いて走る。
 男と、男の影と、光とが、室内に無限の環状の軌跡を生み出した。
「うおおおおおおっ。やっ、やめてくれええええっ」
 男はバターになった。

第七話(20040517) 『魔童女伝説』
「ねぇ、サっちゃん。お父さんが『欲しい物何でもあげる』って言ったら、サっちゃん何が欲しい?」
「えっとね、えっとね、サっちゃんね、洗礼者ヨハネの首が欲しいの」

第八話(20040926) 『遥かな、外へ』
「お客様、どうなさいました」
「えっと、出口を……」
「地上出口と地下出口とエクストラ出口がありますが」
「え、えく……?」
「あ、説明不足でしたね。特別出口とも言います。どこに出るかは……お楽しみです」
「………」
「どれにします?」
 沈黙があった。
 屋内の空気が重くたゆたい、無機質な光が二人の影を薄く床に塗り込めていた。
「……エクストラ出口を」

「先輩、先輩ったら」
「……ん、ああ君か。何か用か」
 ふと男が我に返ると、口をへの字に曲げた後輩の顔があった。
「何か用か、じゃないですよ。どーしたんです、急に難しい顔して」
「いや、別に……」
「やっぱり変ですよ先輩。熱でもあるんじゃないですか?」
 後輩が今度は心配そうな面持ちで男の顔を覗きこむ。
 状況から察するに、しばらく放心していて幾度の呼びかけにも応じていなかったらしい。
「そう……そうかもしれない」
「もーしっかりしてくださいよー?」
 にこやかに長身の男の背中をばんばんと叩く後輩の少年。
 彼の手は幾人もの酔っ払いから小間物を抽き出した「黄金の掌」でもある。妙に心地よい叩打が体調を安定させるのだ。
 もっとも、本人は自分の才能にまったく気づいていないようだが……。
「あ……」
 連打の手が止まり、それきり少年は沈黙した。不審に思い振り向くと、少年は男の顔を見上げて立ち尽くしていた。
「……どうした?」
「先輩、さっきのお客さんは? 困ってる様子のところを先輩が助け舟を出してるよーに見えたんですが、ちょっと目を離した間に急にいなくなった気がして……」
「………」
「先輩またお客さんの機嫌損ねたんじゃないかなー、なんて」
 笑顔を装っているが、まなざしは真剣だった。彼なりに心配しているのだろう。

 ややあって、ぽつりと男が言った。
「消えた」
「え、先輩何言って」
「消えたんだ。この世から」
 男は憮然とした顔で唇を噛み締めていた。

第九話 は 欠番 です 。

第十話(20041023) 『誕生』
 神は言われた。
「悪意あれ。殺意あれ。あまねく地に満ちよ」
 みな、そのようになった。

第十一話(20041125) 『ぬきうち』
 夏の強い日差しが肌を焼く朝。
 校長の長い話も終わり、校庭での全校集会もつつがなく終了すると思われた。
 ところが、全校生徒の期待を裏切って、列をなす生徒達の横を教頭が小走りに駆け抜けていった。
「何だぁ? まだ何かあるのかよ?」
 隣の列の男子生徒が話しかけてくる。クラスは別々だが、今年度になってからの友人だ。
「らしいな」
 対する俺の返事は、きわめて素っ気ない。
「四十分間直立ってわかってたら、絶対遅刻を選択してたぞ、俺は」
 足に意識を集中させなければよいのだ、と思ったが口にはしない。
「な、逃げようぜ」
「どうして」
「たるいから」
 単純すぎる理由だった。
「……俺の直感では、あと十分以内に終わる」
 時々だが、この直感が当たってしまう。円満に終わったためしはないのだが、それは黙っておく。
「信じていいのか、それ?」
 薄笑いを浮かべつつも逃げ場のないことは悟ったらしく、おとなしくしていることにしたらしい。
「お、そろそろ……」

 小太りの教頭がやっとマイクの前に辿り着き、それを手に取る。
「全校生徒の皆さん、今から『抜きうち試験』を実施します」
 スピーカーを通して発せられたその声に、一瞬で私語が止んだ。
 湧き上がるはずのブーイングも、無く。
「二メートル間隔で広がりなさい」
 無言で、整然と展開する生徒達。
 淀みのないそれらの動きは、第三者の視点からすれば機械のように見えたに違いない。
「同じクラスの者同士、向かい合いなさい」
 教頭の言葉に操られるように、生徒達はやはり無言でその命令に服した。
「試験は一分後に開始します。私語は三十秒間に限って許可します」
 ようやく周囲に控えめな私語が起こるようになった。
 声の断片をいくつか聞き流しながら、自分の正面に立つクラスメートを見やる。
 身長は俺より頭半分くらい高い。筋肉も身長に見合った分だけついている。総じて言えば、体格の面において俺に優っているということだ。
「よう、こいつが終わったら屋上で日向ぼっこしようぜ」
 背後から、さっきの友人の声が聞こえる。
「それは一限をサボタージュする、ということか?」
 振り向かず、声だけで応じた。
「数式を聞きながらの早弁がうまいと思うか?」
「……思わない」
 というか、質問を質問で返すなよ。
「じゃ、決まりだな」
 何が決まりなのかわからないが、そろそろ三十秒なので黙ることにした。

「三十秒経過しました。各々に必要な準備をするように」
 校庭内の緊張が弥増す。実際に気温が摂氏二度ほど低下した。
 気息を整え、腰を沈め佩刀の鯉口を切る。同時に、正面のクラスメートもホルスターの中の拳銃の撃鉄を上げていた。
 この“同時”は、全校生徒共通のものであった。
 鯉口と撃鉄の音が、静かな校庭に波のように響き渡った。

「開始まであと十秒」
 各々が抜刀及び発砲の体勢に入っていた。
 目を見開き瞬きをしない者。逆に盛んに瞬きを繰り返す者。俺のように凝っと目蓋を閉ざす者。
 柄頭、或いはホルスターに手を添える者。逆にそれらの前で手を泳がせる者。
 様々の生死が、十秒後に決まる。
「九」「八」「七……」
 このカウントダウンを聞くのは何度目だろう。
 今日のような『抜きうち試験』の後は、減った生徒の分だけ新たに生徒が補充される。
 何の紹介も、説明も、無く。

「五」「四」「三……」
 意識をカラにする。
 もちろん、足回りや腕と太刀の長さに綿密に過ぎるほどの注意を払った上で、だ。
 特に今回は拳銃が相手であるから、踏み込みが浅いと、
 ――即、死。
 である。
 しかし、それら――勝敗や生死――を念頭から追い払った境地こそが、究極的にこの空間を支配するものであることは明らかだった。

「二」「一……」
 先程まで肌を刺すようだった日差しが、妙に心地よい。
 勝っても負けても遺恨のない勝負の中、全校生徒の心に生じた「諦観」という名の空洞から、温かい光が悲愴感を拭い取っていく。
 試験後の校庭を眺めたことが何度もあったが、いなくなった生徒たちは皆、これ以上ないほど安らかな顔をしていた。

「試験開始っ」
 大きく見開いた目が、ホルスターから拳銃を抜き出したクラスメートと合った。
 その瞳に表情はない。おそらく、自分の瞳にも。

 大地もろとも割れよ、という勢いで右足を踏み出し、同時に左手の親指で鍔を押し上げる。加速をつけ、柄を握った右手で前方に孤を描いた。
 太刀の鞘から溢れ出た閃光が、真夏の日差しを弾いて目の前の空間を上下に二断していく。
 同時に、炸裂音を伴う抉るような太い死線が、ひねった躯の右脇腹をかすめていった。
 それと同種の光と音が、校庭を埋め尽くし、揺るがした。


「生徒の解散を許可します。なお、授業は二限から平常どおり行ないます」
 目の前に、胸を割られたクラスメートが倒れていた。
 ただ、それだけだった。
「あーあ、一限サボろうと思ったら、授業は二限からかよ。ほんとに遅刻してくればよかったぜ」
 二メートル後ろから、友人の声がする。
 振り返って姿を見ると、額と鼻筋、唇を割って心臓のある辺りまで、太い線が走っていた。
「お前、銃弾避けるんじゃねーよ。“勝負は一対一”は原則に過ぎない……んだ……ぜ……?」

 かつての友人を片手拝みに、教室に戻ろうと校舎のある方角へ目を向けたところ、視線の先に“検校市”こと市村龍之介の後姿があった。
 周囲の生徒が盲目の剣侠“座頭市”を意識してつけた仇名だが、それに恥じない強さを持っている。おそらく、全校最強と言っていいだろう。
 仇名どおり、彼は盲目である。
 そして、彼が太刀を抜くと、剣尖の触れる範囲の生命体は瞬時に死滅する。太刀筋は見えない。
 だがここに、座頭市との決定的な違いがあった。
 “強すぎる”のである。
 彼が本気を出すと剣速が音速を超えて爆発音に似た轟音を発すると言うし、嘘か真か彼の一閃により相手が行方不明になったという噂さえある。もっと詳しい噂によると、その相手は物理的に蒸発してしまったという。肉片はおろか、血液の一滴すら、彼の前では存在を許されないのだ。噂を全て信用するなら、だが……。
 ――あいつと同じクラスじゃなくてよかった。
 そう思うのは、俺だけではないはずだ。
 彼は人を斬っても、刀身の手入れをするということがない。手入れをする必要がないのだ。振りが速すぎて血も脂も刀身に乗らない、それほどの腕の冴えといえる。
 だから、誰も彼の太刀を見たことがない。太刀筋が見えないのだから、斬られた本人にも刀身は見えない。いや、そもそも検校市は盲目なのだから……。
 そこまで考えて、やめた。
 気がつくと、俺は数百の死体の中に取り残されていた。

 九時のチャイムが校域内にこだまする。
 さて、あと一時間、二限まで何をして時間を潰すかな……。
「日向ぼっこ……」
 そうだ、屋上で日向ぼっこをしながら早弁、という約束だった。
 思い立った俺は、友人の身体を引きずりながら校舎に向かった。

第十二話(20041230) 『Strength』
「よく考えてみてよ」
「あん?」
「お汁粉も、コーヒーと同じで原料は豆なんだから、その実力は同等……」
「………」
「いや、甘さだけを考えれば、それ以上の」
「………」
「ツッコミ、無いんですね……」
「期待してるならもっとうまくボケろよ」

第十三話(20051201) 『ありうべからざる関係』 (c)ワンダーファーム"天使のしっぽChu!"
 僕は今、十二人の住民票を持たない少女と同棲している事実を目の前に、アパートの管理人相手に冷汗をかいている。
「あの、どういった間柄で……」
 管理人の立川はるか。一般人だ。
 勿論、ここで、
「この子達は元動物の守護天使です」
 ……などとは言えない。
「この子達は、か……」
 家族。
 血の繋がりはなくとも、同じ人間ですらなくとも、それに匹敵するだけの絆が僕たちにはある。
 今、この瞬間、僕たち十三人の考えは一致した。
 ……はずだった。
「革命の同志です」
「え……」

 追い出された。嘘なのに。

第十四話(20070830) 『VIPの某新ジャンルスレに投下したけど不評だった小説』
 久々にサークルのBOXを訪ねたら、彼女は絨毯の敷かれた床でだらしなく寝ていた。
「――先輩」
「……ん」
 気だるい返事が小さく返ってくる。
「もう昼ですよ」
「知ってる」
「寝てたんですか?」
「横になって瞑想していただけよ」
 目を閉じたまま大儀そうに彼女は答える。
「最近講義、出てないそうじゃないですか。単位の方は大丈夫なんですか?」
「……代返・出席カード・ノート、抜かりは無いわよ」
 その辺のことは彼女の信奉者が片付けてくれているらしい。
 実際彼女は平生倦怠と憂鬱を体現したような人物だが、頭は相当切れると見えて信奉者のノートと講義評だけで内容を完璧に理解してしまう。課題のレポートもPCで必要な資料を的確に判断し、これらをまた信奉者に持ってこさせて一日足らずで仕上げる。

「………」
 いつからだろう。
 この部屋が文芸研究会とは名ばかりの、彼女の後宮になってしまったのは……。
「きょうは」
 彼女の小さな唇が言葉を紡ぐ。
 それからしばらく次の言葉は発せられず、僕はその場で五分程も立ち尽くさねばならなかった。
「……何しに来たの」
 溜息のように微かに零れ出たその言葉には、聊かの怒気も不機嫌さもなかった。
 (瞑想を妨げて気分を害していたらどうしよう)と密かに危惧していたが、どうやら杞憂だったようだ。

「御見舞い……ですかね」
「見舞い? 私は割と健康よ」
「でも、いつもだるそうにしてるから……」
 窓辺の花瓶をそっと手に取り、流し台に立ち手早く水を取り替える。
 実を言うと講義で一緒だった女の子に花瓶の水替えを頼まれただけで、咄嗟に出た"御見舞い"に特に大きな意味はなかった。或いは他の彼女の信奉者と同様に(少しでも彼女に好かれたい)という思いがそう言わせたのかもしれない。
 そして――そういう卑怯な自分にひどく腹が立っていた。
「……そう」
 僕の内面の葛藤を知ってか知らずか、彼女は短く感情少なに応じた。
「頭痛薬、補充しときますね」
「………」
 行き付けの薬局で買い過ぎた頭痛薬を枕頭の薬箱に詰める。口頭で確認したわけじゃないが、彼女は僕と同じで頭痛持ちだと思う。
 枕元からは彼女の髪のよい香りがした。化粧品とか石鹸とか、そういうのはよくわからない。たぶん、何かの花の香り。

 互いに言葉を交わすでもなく、僕と彼女の間には先刻水を替えた花瓶の花の瑞々しい香りが流れて、幾分か時が経った。
「用が済んだのなら帰りなさい」
「はい」
 それだけだった。
 花の香を背に受けてBOXの扉を開け、軽く頭を下げて退出する。彼女はずっと、瞼を伏せたままだった。
 いつもの流れだ。しかし今日は違った。
「……また来なさい」
「………」
 彼女の小さな呟きに応じる間もなく、無情にも重い扉が閉まる。

 それから一日、胸の高鳴りが止まらなかった。

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