特集「西田健」
「しかし、私は何回死んだのかわからないよ。
半分が最後は死んで終わるんだ。
死ぬって事はいろいろ考えさせられるんだよ。」
西田健の言葉
らみさんオフ会(東京プラモ完成記念オフ)にて

 どうしても刑事ではなく悪役などに目が向いてしまう私にとって、
この言葉は実に心に残るものでした。
単発で登場し、そして消えてゆく・・・。様々な魅力ある役が登場するのには
いつも驚かされっぱなしでした。
そして刑事役では見ることができない毎回違った生き様を見せてくれるところに
いつも期待が高まり、楽しませてもらいました。

 出演作品についていろいろコメントしています。



サブタイトル
殺し屋刑事
13 バスストップ
23 車椅子の女刑事
32 死んだはずの女
39 ギャングに呼ばれた刑事
86〜88 パリ警視庁の五百円紙幣
冬のパリの殺し屋
パリー紺碧海岸縦断捜査
94 ブリュッセル国際空港の女
117 日本降伏32年目の殺人
137 ’78新春大脱獄
161 嘘つき警官
187 爆弾を持ったサンタクロース
198 パレットナイフの殺人
226 電話魔
250 パリ・セーヌに浮かんだ裸女
300〜301 盗まれた女たち
盗まれた女たちPART2
316 赤い千円札で煙草を買う男
333 悪魔を呼ぶ子供
350 壁の中の赤い殺意



第4話『殺し屋刑事』
1975/6/14放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・原弘男
監督:鷹森立一 脚本:高久進 撮影:下村和夫

構成:深作欣二、佐藤純弥
過激派
あらすじ  男たちが親子二人連れを人質に銀行強盗に押し入った。
人質にとった母子を射殺し現金強奪、逃走した。警察の厳重な包囲網には引っ掛らなかった。その後、捜査線上に地下駐車場の男が浮上。Gメンと所轄刑事はその男をおとりに犯人たちを誘き寄せるが・・・。
コメント  Gメン初登場のストーリー。
 開始早々いきなり登場。果物を頬張りながら道路横断したかと思うと路上駐車の車を盗難。ああ、やはり犯罪者(笑)。妙にわくわくします。

 さて、初めからサングラスをかけているのですが、変装のために付け髭もしています。そんな姿で車の中から口笛を吹き仲間を呼ぶシーンや、仲間が来るまで果物を頬張っている仕草は冷酷な過激派というイメージを受けません。人間味のあるところが印象的でした。初めて観た時はこういうところに西田健らしさを感じました。

 Gメンたちの囮捜査する現場に近づく。刑事の臭いを五感で感じ取っている。刑事たちが潜んでいる中、またしても果物を頬張って登場!あれがアドリブなのか気になりました。

 作品としては妻と子を殺されたひとりの刑事の捜査に対する執念を中心に描かれたものでしたが、その中でも印象的だったのが鳩が飛ぶシーン。鳩のシーンは2回ほどありましたが、ラストの刑事が撃たれるシーンでの鳩は感動的。

第13話『バッスストップ』
1975/8/16放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・原弘男
監督:鷹森立一 脚本:高久進 撮影:下村和夫

構成:深作欣二、佐藤純弥
過激派(むらかみ)
あらすじ  小田切警視は極秘裏に過激派の捜査を遂行。手掛かりは唯一組織に潜り込んだ潜入捜査官からの情報だけ。黒木警視を除くGメンには秘密にしていたのだが、ひょんな事から響刑事が潜入捜査官に近づき悟られそうになる・・・。
コメント  女性ファンにとってはたまらない(?)服装で登場。
季節は夏。白いツバのある帽子を被り、長袖のシャツを着ています。そのシャツの下にはなにも着ていません(笑)。シャツのボタンはいくつか外れており胸が露出。何人のファンがノックダウンしたでしょうか(笑)。

 喫茶店で仲間と待ち合わせ。既に目つきが鋭い。
今回はセリフが極端に少ない(全部で4回くらい)。
そのためか”しぐさ”による演技が光るのです。

 トイレの中で男3人がなにやら企むシーンでのこと。
(西田健、蟹江敬三、中野誠也と豪華;)
組織に裏切り者がいるとの事で、なぜか仲間に疑われる。
この時のセリフなしの演技が印象的。
目は口ほどにモノを言う、まさにそんな感じ。
画面に大きく映る西田健。ビジュアル系俳優ならではのショットでしょう。
 最後には「じょうだんじゃねぃや」と否定するセリフを発するのですが、この語気から今回の役柄の形がこの一言からはっきりと伝わってくるほどのものだったのが印象に残りました。今回はあまり活躍の場がなかったので・・・。

 単身、暗殺のために警視庁の人物をつけるのですが、このときも肌を露に(笑)。軽装なので拳銃を隠すところがなく、シャツの中に突っ込んでいるためほとんど全開。映るたびにボタンが外れていくのです(笑)。
 結局つけまわしてから捕まるまでの間セリフなし。あっけなく逮捕されてしまいます。次の場面で取り調べられるのかと思いきやそれで再び登場することはありませんでした・・・。ん、ん、物足りない(笑)。この後の取調べシーンを期待したひとは少なくないはず(!?)。


第23話『車椅子の女刑事』
1975/10/25放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・原弘男
監督:鷹森立一 脚本:池田雄一 撮影:下村和夫

構成:深作欣二、佐藤純弥
エンジニア(影山光男)
あらすじ  改造拳銃の密売を巡り取引相手を殺害。車で逃走する3人。逃走途中で仲間のひとりが心臓発作で死亡。男と女は死体のやり場に困る。死体処理後、アパートの向いにある病院の一室にいる女に監視されている、いないでふたりは揉める。死体処理の行動を目撃されたか否か、男は病院に偵察に行く・・・。
コメント  前回の過激派役から一転してどこか抜けたようなエンジニア役。
どこにでもいるような若いカップルで、なんといっても今回のみどころはふたりの言い合いに尽きると思います。

 ”情けなさ”を印象付けるかのようなしぐさが実に滑稽。
それは逃走中終始サングラスをかけているのですが、次第にそのサングラスがずり落ちてきて、終いには目ではなく鼻にサングラスをかけているくらいにずり落ちているのです(笑)。
細かいしぐさについて述べるときりが無いほどなのです。
 相手役の緑魔子演じる女性もこの光男(みつおちゃん!(笑))に見事なくらいにお似合いなところがおもしろいのです。

 今回の犯罪者役は過激派役などとは一味違った味があって、いろいろ堪能できる作品になっています。ご自身もお気に入りの作品だそうです。


第32話『死んだはずの女』
1975/12/27放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・原弘男
監督:小西通雄 脚本:池田雄一 撮影:林七郎

構成:深作欣二、佐藤純弥
ラーメン屋(多田俊次)
あらすじ  関屋警部補は屋台のラーメン屋でひとりの女を見つけた。その女、三村朋子は5年前にナイフで刺され山中に投げ捨てられ死んだはずだった。
 当時その事件を担当していた関屋は執拗に朋子に真相をせまるが頑なに否定する。朋子の旦那(多田俊次)も暗い過去をもっており、ふたり慎ましく幸せな暮らしを送っていたのだが関屋の出現によりそのちっぽけな幸せは脆くも崩れ去ってしまう・・・。
コメント  過去を隠しながらラーメン屋を営む男を演じています。
今回はちょっと気弱で頼りないところがなんともいえません。
ラーメン屋の縄張り争いでのやり取りでのいくじなさ、そして最後ふたりでラーメン屋の屋台での食事の際に泣きべそをかきながら食べるシーンがそれ。山中で自殺しようとして結局果たせなかった意志の弱さ。若さ溢れる西田健ならではの死をためらう多田俊次に共感せずにはいられませんでした。

 「一度死に損なうと死ににくい」という多田俊次のセリフ。
生への執着のようなものを感じるもので、この作品で考えさせられるものでした。
 目の前にあるささやかな幸せ。ようやく軌道に乗り始めたラーメン屋。共に暮す三村朋子に「いっしょに山に行こうか」と言うシーンは涙を誘うもので実に感動的。多田の心理が手に取るように感じられ、気がつくと二人に感情移入してしまうほどのものなのです。
 連添う女、三村朋子・・・。この川口晶の味はすばらしく、語ると「特集」が組めるほど書きたいことがあるので省略しますが、彼女の好演は忘れてはならないでしょう。

 この作品は個人的にGメンの中ですごく好きな作品で、必死に生きようと悩み抜く若いカップルの哀しい人生を小西通雄監督の手によって実にすばらしい感動的なストーリーとなっていると思います。もちろん、俳優、脚本、音楽(シクラメンのかほり!)等の良さは言うまでもありません。完成度は群を抜くものがあります。


第39話『ギャングに呼ばれた刑事』
1976/2/14放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三・原弘男
監督:小西通雄 脚本:高久進 撮影:林七郎
構成:深作欣二、佐藤純弥
元暴力団(立花仁一)
あらすじ  立花に呼び出された草野刑事は拳銃を奪われた。立花を追うGメンだったが次々と拳銃が火を吹く。立花は過去の恨みを晴らすべく犯行を重ねる。追う草野刑事は拳銃を奪われた事で冷静に捜査ができなくなっていた・・・。
コメント  黒いコートに身を包むギャング、立花仁一。
登場するや否や草野刑事を呼び出し人質をとって拳銃を奪ってしまうのには期待高まるものがありました。単なる金目当てのギャングではなく、実は妹思いの立花。犯罪に筋を通すための理由付けにもとれますが、終盤見せた泣き顔は本当に家族思いであるのではないか、と思えました。
また、ここで「泣く」といったものが絵になるのは西田健ならではだと思います。

 恨みを晴らすべく密かにヌードスタジオに潜伏するのですが、この時の舎弟との場面が印象的。
それは立花は瞬きひとつせず、対話するといったもの。
恨みに対する執念、筋を通そうとする信念のようなものが良く伝わってくる、そんな場面であり、魅力ある人物。黒いコートに両手を通さず羽織る姿も格好良いのです。

 ラストシーン。
立花は完全にやぶれかぶれになっていました。
この暴走を止められるのは妹しかいなかったのでしょうか。
裏切られ続けてきた立花。妹思いの立花も実は妹にも裏切られていた・・・。学生服を着ていた頃の立花がなぜこのようになってしまったのかを考えると結局、社会の”悪”に辿りつき立花もその被害者であったような気がしてなりません・・・。世の中うまくいかないものです。


第86話〜88話「ヨーロッパロケシリーズ」
1977/1/8,15,22放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:鷹森立一 脚本:高久進、西島大 撮影:下村和夫
構成:深作欣二、佐藤純弥
フランス料理人を目指す青年(坂崎たつや)
あらすじ  日本で起こった3億円強奪事件で奪われた紙幣の一部がフランス・パリの日本人殺害現場で発見された。真実を突きとめるべくGメンはフランスへ飛び、捜査を開始した。だが、現地捜査官は日本人に非協力的でGメンの捜査は難航する・・・。
コメント  フランス料理人を目指す坂崎たつや。
刑事が来たというだけで料理人をクビになり女に涙を見せる情けない坂崎。恋人の女の方がしっかりしているといった感じ。
 このような頼りなさそうな青年役は、第32話などでの役にも共通して見られるのです。「涙を見せる弱々しい青年」役はあの服装、ヒゲも手伝って西田健の印象が固定しそうなものとなっている気がします。

 坂崎というキャラクターは前科があるため一生その枷に苦しむ青年。Gメンだけでなくフランス警察からも前科者扱いでみられるなんとも不憫な男。自業自得と言えばそれまでなのですが、一度押された前科の烙印は消えません。さらに人種的な偏見で逮捕されるというなんとも不運続きでいいところが全く無い。トドメは冷たい石畳の上で殺されてしまう・・・。
 なんのために生きてきたのか、考えてしまうのが今回の”坂崎たつや”でした。


第94話『ブリュッセル国際空港の女』
1977/3/5放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:佐藤純弥 脚本:西島大、高久進 撮影:下村和夫
構成:深作欣二、佐藤純弥
絵描き(あやべ まさお)
あらすじ  海外へ盗品として流出した浮世絵を取り戻すためにGメンは手掛かりを頼りにパリまで飛んだ・・・。
コメント  うだつの上がらない絵描きを演じています。
共に暮していた”ありよし りゅう”は画廊の娘と強引に結婚し、出世。一方、あやべは全くダメ。完全に負け犬。プライドの高さだけは一人前なのですが、そのプライドと飯を食う事の狭間で苦労している。
そんな絵描きをとてもわかりやすく演じている。
 印象的だったのは、
「フランスでは食うためには女を食い物にするのはあたりまえなんだよ!」
と、強い語気で言ってのける場面。
負け犬の遠吠えにしか聞えないのですが、実際のところリアリティーある理屈でおもしろい。絵描きに限った理屈でもないと・・・。
 そして強い口調で言い放った後、泣きべそをかくところが西田健さんらしい”絵描き”だと思います。画家としてのプライドが僅かでも残っているからこそ、悩み抜いて涙を流すのでしょうか。

 強がっても実のところ芯は弱くて、絶えず迷っているようなキャラクターを演じるのが目立つように思えます。これは今回の作品に限ったことではなく、良く見られる傾向だと思うのです。


第117話『日本降伏32年目の殺人』
1977/8/13放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:鷹森立一 脚本:高久進 撮影:吉田重業

構成:深作欣二、佐藤純弥
中国残留孤児(豊田正夫=孫明生)
あらすじ  ヘロイン密輸組織の一人が殺された。現場検証の際に近くで両手を合わせる男がいた。その男を調べるうちに真相が次第に明かになる・・・。
コメント  32年ぶりに日本へ戻ってきた中国残留孤児、豊田正夫を演じています。
連れ添う女性(江上トシ子)を演じるのは緑魔子。違和感なく、しっくりくるなーと思ったら第23話でも同様に連れ添っていたのでした。しかし、第23話と異なり、今回はユーモア(?)なしの真面目なもの。テーマがテーマですから・・・。

 終戦から32年。実際の年齢と劇中の設定が同じということから出演したのかは興味があるところ。流暢に日本語が話すことができないという役は、みごたえ十分です。
 父の死に涙し、母との再会で涙する。最後には母を泣かせる正夫。果たして中国で死んでいればよかったのか、生きて日本に帰ってきた方がよかったのか、重い問題で考えされるものでした。これもGメンの魅力ですね。最近の軽いヤツとは大違い。
 時代に翻弄された正夫を見事に演じきる、いつのまにか感情移入してしまう、そんなすばらしいものでした。
 そしてエンディングテーマの”追想−しまざき由理”がこれほど心に染みるのは久しぶりでした。


第137話『’78新春大脱獄』
1978/1/7放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:鷹森立一 脚本:高久進 撮影:吉田重業
構成:深作欣二、佐藤純弥
金庫破り(船田栄次)
あらすじ  警視庁引越しのどさくさに紛れて金庫から押収した2億円相当のヘロインが盗まれた。容疑者は船田栄次、金庫破りで前科がある。Gメンの取調べにも屈せず全く自供をしない。そこで船田を泳がせるため拘置所に留置、共犯からの連絡を待った。しかし、連絡はなかった。そこで同じ独房に中屋刑事を潜入させたのだが・・・。
コメント  金庫破りの前科をもつ男を演じています。
今回は見どころが満載。
実にバラエティーに富んだ表情を見せてくれるのです。Gメンの取調べを受ける際にとぼける様から始まって、ユーモア満載。当時、正月放送ということからの趣旨かもしれません。

 警察の制服を盗んだ事の弁解で、制服を着てみたかっただけと言い張る。コスプレ趣味だと言わんばかりの弁解は笑えます。
 ダイナマイトを盗み、中屋刑事に見せつけるときの笑顔は見ているこっちまで笑顔になりそうなくらい満面の笑みを浮かべるのです。まるで子供がおもちゃを手に入れた時のような嬉しい表情をしているのです。
 そんな表情があるかと思えば、中屋を人質にとって噛みつかれそうになった時の迫力ある脅しは凄みがあったり、ラストの妹とのシーンでは手のひらを返したような豹変ぶりはいかにも犯罪者らしくておもしろいものでした。

 様々な表情が楽しめ、笑いが随所に散りばめられた見ごたえある作品であり、”西田健”を堪能できるのが第137話なのです。


第161話『嘘つき警官』
1978/6/24放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:山内柏 脚本:池田雄一 撮影:吉田重業

構成:深作欣二、佐藤純弥
交番勤務の警官(ぬまた巡査)
あらすじ  交番勤務のぬまた巡査は第一線で活躍する刑事に憧れていた。ある晩、帰宅途中に殺害現場を目撃。犯人の顔、逃走者のナンバーなど有力な証拠を目撃していながら第一発見者として偽りの証言をした。次第にぬまた巡査は事件に深く関わることになる・・・。
コメント  第一線で活躍する刑事に憧れる派出所勤務の警官を演じています。
 同期の中屋刑事がGメンで活躍中。そんな彼に劣等感を感じているといった役柄で、他の出演作品なども同様ですが、いつも社会的に弱い立場にいるようなタイプを実に個性的に演じている印象を受けます。
最後に涙を流すのはGメン作品には多く見られ、夢を打ち砕かれた男の悔しさが共感を呼びます。

 本編は「西田健Gメン加入か?」といった内容もあり、ストーリーの展開に期待を膨らませられるものでとてもおもしろいのです(ファンだけか?)。しかし、タイトルの「嘘つき警官」とおもいっきり出てしまってしるので初めから全否定されていますがね(笑)。

 背広に着替え「Gメンのぬまただ」などと練習するシーンは必見!歩きながら警察手帳を内ポケットから取り出して呟いているのです。加入したらこうなるのかー、などと想像してしまいました。

 また、Gメン本部でのシーンも見物。いつものGメンメンバーだけのGメン本部の様子ではあまり感じられなかったエリート集団の雰囲気が、ぬまた巡査ひとりそこにいるだけでGメンたちがいかにエリートかを浮き立だせているように思えるから不思議。ぬまた巡査の挙動によって、エリートとそうでない者の対比を見事に現しているように感じました。西田健ならではの存在感が成せるものではないでしょうか。


第187話『爆弾を持ったサンタクロース』
1978/12/23放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:小松範任 脚本:池田雄一 撮影:下村和夫

構成:深作欣二、佐藤純弥
体の不自由な男(かわむら)
あらすじ  3人組みの連中が社長誘拐の案を記していた。その書かれた原稿が山田刑事の足元に風にのって飛んできた。内容から山田刑事はムキになり真相を聞こうとするが、それは懸賞金2000万円の小説に応募するためのプロットだという。山田刑事は半信半疑のため連中に加わり真相を確かめるのだった・・・。
コメント  爆発で左腕を失い片足も不自由という男を演じています。
出てくる3人組がすでに怪しい(笑)。その中でも口数が少ないが、振るまいが独特で目立つ。公園のベンチで座るシーンでは両足が内股に(笑)。変なところで印象に残る役柄でした。
 災害保険かなにかで暮しを立てているようで、貧乏らしい。
貧乏生活で落ち込んでいるかというとそうではない。話す口調はしっかりしていて、声は低く、目つきも死んではいない。なにか企んでいるのでは?と疑いたくなるような挙動を示す。案の定、企んでいましたが(笑)。
 第161話でもダイナマイトを振りまわしていましたが、今回も爆弾で発破しまくり(笑)。当時、”爆弾魔=西田健さん”だったのでしょうか・・・。
 作中の格好も色は地味なものですが、帽子に布袋をもっていたのはサンタクロースを意識した格好だったのでしょうか。あの袋には爆弾が忍ばせてあったりして。


第198話『パレットナイフの殺人』
1979/3/17放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:山内柏 脚本:池田雄一 撮影:吉田重業

構成:深作欣二、佐藤純弥
画家(沢村たつや)
あらすじ  昌代がアトリエに帰ると恋人の沢村たつやはモデルの女を抱いていた。カッとなった昌代はそばにあったパレットナイフでたつやを刺す。傷は浅く戸外へ逃げるたつや。追う昌代。道端でもみ合うところを通りかかった立花警部補に昌代は逮捕された。3年後、土地成金の殺害計画の捜査で立花警部補はたつやと結婚した昌代と再会。昌代がなぜたつやと結婚していたのか・・・。
コメント  モデルを抱いている画家として登場(笑)。期待が膨らみます。
たつやという名前はヨーロッパロケシリーズでも同じ名前で出ていました。あの時も画家。という事はまたなにかあるのか?と思っていたらやはり予想通り(笑)。しかし、先回とは比較にならないほど知能犯。まれに見る真の悪党ではないでしょうか。計算し尽くされた行動には感心してしまうほど。

 着用していた服に注目してみますと、養子先の沢村の旦那を道路で助けた時着ていたのが白いセーター。結婚式のも白。潔白をイメージさせる白はお茶の間をも騙しているように感じられるのですが、考え過ぎでしょうか。白い仮面を被った悪党、といった感じでしょうか。
 結婚式での顔も今思えば微笑すら見せていません。無表情なのです。結婚もなにもかも計算のずく・・・。恐るべし沢村たつや。でもカッコイイからたちが悪いんですよね。

 ひとりの女を思うがままに操り騙すその力量は愛情、憎しみなどを知り尽くした男にしかできないように思えます。とんでもない男です。最後にならないとたつやの正体は判明しませんが、それをクールな男として演じるところがすばらしく、そこに西田健の魅力を感じました。 


第226話『電話魔』
1979/9/29放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:鷹森立一 脚本:池田雄一 撮影:内田安夫
構成:深作欣二、佐藤純弥
婦人警官に恨みを抱く青年(とおる)
あらすじ  婦人警官の寮に果物が届けられた。食した婦人警官のひとりが果物に含まれていた青酸カリによって死亡。捜査する津川警部補に同一人物からタレコミの電話が頻繁にかかってくる。津川警部補はその電話によって翻弄される・・・。
コメント  婦人警官への恨みで凝り固まった青年役。
幼い時の強盗事件で婦人警官の対応がその後の人生を狂わせるというストーリー。幼い頃のささいな出来事というのは意外と本人にとって深刻であることがあったりする。このあたりを池田雄一氏がうまく描いていて本編の面白いところである。
子供からの電話ということもあって、110番の事務的な対応に父親を亡くした子供時代。対応した婦人警官の対応がたまたま悪かったと簡単には言えないような不幸な出来事。110番側もイタズラ電話は数多いかもしれないが、その配慮に欠けた対応によって少年の将来が歪められた事は犯罪に匹敵するほどのものの様に思えてきます。
 それは西田健の「目」と「手」の表現力で楽しめるというところが本編の前半での見所。「電話魔」のタイトルに映る人物はファンならすぐに見破れますがね(笑)

 復讐することに、人生全てをかけたというのはあまりにも哀し過ぎます。津川警部補に自分のタレコミを信じてもらった時は本当に嬉しかったのかもしれないが、以降の対応にやはり人間不信は直らなかった模様。信じられなかった時の語気の荒さからそう受け取れます。
この平静時と興奮時の電話での声のトーンの高低がまたわかりやすくておもしろい。

 津川警部補を精神的に追い込みはしましたが、どうにかして自分の不運を解って欲しかったのもあるのでしょうか。両親がいない子供の精神状態とその後の成長に落とす影の部分は当事者にしかわからないのかもしれない。こう考えさせるほどの後半での緊張感を保った「目」はとても見ごたえがある。

 力ずくでの手段でしか訴えられなかったのはあまりにも不器用でしたが、死をもっての訴えは少なくとも津川警部補には届いたのでしょう。
 しかし本人にはなにも得るところはありませんでした・・・。
怨みも法の前では潰されてしまう・・・。

 終始、帽子の下から覗くその「目」からは絶えず復讐への狂気と悲哀が感じられ、西田健の魅力がよく出ていて見ごたえのある作品でした。


第250話『パリ・セーヌに浮かんだ裸女』
1980/3/15放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男・樋口祐三
監督:鷹森立一 脚本:西島大 撮影:吉田重業
構成:深作欣二、佐藤純弥
絵描き(あおき)
あらすじ  パリ・セーヌ河に日本人女性の死体が浮かんだ。身元不明としてGメン本部にその死体の特徴が送られた。女は一年前、フランス・パリへ絵描きとして旅立った田口刑事の姉に似ていた。また、フランスで津川警部補はその姉に会ったことがあった。黒木の命令で田口刑事、津川警部補はパリへ飛んだ・・・。
コメント  絵描きとして登場。
 留学生や観光客を食い物にしているといった落ちぶれた画家。
というか落ちています(笑)
第94話「ブリュッセル国際空港の女」での画家”あやべ まさお”と設定が似ています。
 ワインを水のように飲む様はそっくり。刑事の質問にとぼけた返事をするところもそっくり(笑)。先回のあやべは画家として売れないことを本当に悩み苦悩していて、泣きべそをかいていた事から伝わってきましたが、今回のあおきはなにか開き直ったような感じを受けます。画家としてのプライドなどをセーヌ河にでも捨ててしまったのでしょうか。

 テーブルの上にはワインだらけ、引き出しを開ければ空のワインのビン(笑)。ポケットにはカラの煙草。極めつけは画家の大事なものであろうはずのパレットが灰皿代わり・・・。まるで先回のあやべが年月を経て今回のあおきになったような感じさえします。絵描きとしての雰囲気が薄弱で単なる怠け者?あれだけ少ないシーンでこれだけ表現が伝わってくるところが凄いですね。

 ヨーロッパロケシリーズといえば「冬」「鉛色の空」「胡散臭い画家」が思い浮かびます。シットリとした物語の展開と暗いイメージのセーヌ河が胡散臭い画家によく似合います。やはりGメンでの画家と言えば西田健さんが真っ先に思い浮かびます。


第300回記念スペシャル『盗まれた女たち』
第300回記念スペシャル『盗まれた女たち』
1981/3/7,14放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男、樋口祐三
監督:山口和彦 脚本:佐藤純弥 撮影:吉田重業

構成:深作欣二、佐藤純弥
誘拐犯(小山のぶお)
あらすじ  亜細亜総業社長大西俊夫が誘拐された。身代金の受け渡し場所へ向う途中、東洋銀行に立寄った大西社長婦人と吹雪刑事は銀行強盗事件に巻きこまれ人質となってしまう。

一方、大西社長身代金の受け渡しで誘拐犯のひとり小山けんじが死亡。残るけんじの兄小山のぶおと妹えつこは再度取引へと臨んだ・・・。銀行強盗は行員の通報により多くのものが人質となり警察との緊迫した駆け引きが続いていた・・・。
コメント  誘拐犯を演じる。
とにかく、今回は”かっこいい”に尽きます!
ハードボイルドとはまさにこの小山のぶおの事を言うのかもしれません。初めてこの作品を見た時は感動を覚えました。

 人質とのやり取りや警察との電話でのやり取りの際は実にクールで紳士らしさが漂っており、また、長男というよりも父親的な立場として弟妹の面倒を見なくてはならないという事からか、落ち着きを払っておりこれらが実に魅力的な人物なのです。
 また、元婚約者を振るシーンはこのストーリーで最も好きなシーンのひとつ。

「黙って別れてほしい・・・さようなら・・・」

と言い残し、雪の降る中傘もささずに両手をポケットに入れて立ち去る・・・女の髪は濡れていて、その顔には涙が流れている・・・女は後姿を見送りずっと見つめ続けるのですが、のぶおはもちろん振り向きません。
これをハードボイルドと言わずに何をハードボイルドと言いましょうか。

女を泣かせる、違った意味で悪いやつなのですが、婚約をした女を振ってまで自分の信念を貫く姿はカッコ良過ぎます。これをダンディズムというのでしょうか。

 そして最後の潔さと飛行機を見上げる姿。
涙を潤ませ、飛び立つ飛行機を見つめるシーンは心に染みるものがありました。夢が飛んでいってしまったようで、なんとも切ないのです。

 今回のストーリーは二つの事件が同時進行でなおかつ、内容面でクロスしている部分があり、見ごたえ満載なのです。もうひとつの事件の銀行強盗の主犯を演じるのは小林稔侍さん。
これがとんでもない悪党で、格好からして胡散臭さ抜群(笑)。この銀行強盗と西田健演じる誘拐犯を交互に見ると誘拐犯小山のぶおの渋さ、クールさが一際目立つのです。銀行強盗はやさしさのかけらもないワルでしたから・・・。

 私にとってこの「盗まれた女たち」「盗まれた女たちPART2」はGメンの中でも名作中の名作で、愛して止まない作品です。



第316話『赤い千円札で煙草を買う男』
1981/6/27放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男、樋口祐三
監督:小西通雄 脚本:佐藤純弥 撮影:下村和夫
構成:深作欣二、佐藤純弥
中野坂署警察官(相良警部)
あらすじ  素行不良の森口が何者かに鉄パイプで殴打され死亡。遺留品、目撃などの証拠が多く揃っていて疑惑が相良警部に向けられた。

Gメンはアリバイを中心に捜査を進めるが相良警部の犯行が濃厚になる。しかし次第に明らかになる真相に揺れる人間模様が浮き出てくる・・・。
コメント  本庁へ栄転目前の警部を演じています。
エリートらしさを現すかのように会議室に少しふんぞり返りぎみに座っている姿は西田健独特の姿勢に思えます・・・、と思ったら実はただ単にローアングルから撮影したためと判明。


 Gメンに疑われる相良警部は犯人か否か?ストーリーはそこを焦点に進むのですが、今までいろいろな作品を演じてきた西田健さんが演じるのでどちらか全く予測できないところにおもしろ味を感じてしまいました。

また、登場人物として小林稔侍さんが同じ所轄署員として登場していることも影響して、誰が怪しいのか不明なのです。

第300話であれだけ大暴れした小林稔侍さんがちょい役で終わるのか?と偏った推測が働いてしまうのです。

 先回の第300話ではおふたり共出演しているにも関わらず、全く別の場面で登場していたので、同じ画面に映ることはありませんでした。今回の共演はファンとして実に豪華で見ごたえあるものでした。

 おなじみのGメンの暗い取調室。
Gメンらと相良警部とその妻(水原麻記)、まざき巡査部長(小林稔侍)たちで事件について自供する場面は嘘が一枚づつ剥がれていくようで、真相解明へのプロセスに面白味を感じました。

 暗い部屋に立つ登場人物たち。
話の展開と共に変化する照明。

人物に当たる陰影が変化して、心理の変化、表情の変化が豊になっていて効果的に思えました。

また、ラストシーンはこれぞGメンといったような終わり方であり、小西通雄監督流の作品に仕上がっているように感じました。

第32話「死んだはずの女」も小西監督であり、哀しみに満ち溢れたラストは共通点があるように思えます。

 相良警部の冷静さが次第に崩れ、裏切りが裏切りによって自分の身に返ってきてしまう。取調室で相良警部が崩れ落ちる様がとても印象的でした。


第333話『悪魔を呼ぶ子供』
1981/10/24放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男、樋口祐三
監督:下村和夫 脚本:石山昭信、高橋芳郎 撮影:下村和夫
構成:深作欣二、佐藤純弥
青年(たけだ きよし)
あらすじ  傷害事件を犯した”たけだ”は駅構内のトイレに逃げ込んだ。
ブースにいた地方から父親を探しにきた少年忠に匿ってもらった。だが、後日刑事に追われたたけだはビルの屋上から転落して死んでしまう。

逃走中に落した拳銃を忠は拾い近くにいた少女ゆかりを誘拐してしまう。屋上に逃げた少年は上野行きの列車で出会った古田刑事の説得を受ける・・・。
コメント  足が不自由で訛りのある”たけだ きよし”。
開始早々転落してしまい、もう終わり!?と思ってしまいました(笑)。しかし、回想シーンとしてちゃんと出てきてひと安心(笑)。

西田健出演作品で回想シーンというのは多く、これがまた本編では見せない笑顔や生き生きとした姿が見られたりするのです。

今回は彼女との幸せな生活が写っているアルバムが出てきます。これが普通の青年なのです。
普通が変というわけではありませんが、今までの出演した役柄からみると珍しいのです。

 素人目からみると犯罪者の役はやり易く、逆に普通の青年の方が難しそうに見えます。
しかし、西田健演じる青年はやはり味があります。
暗い人物像が身体から滲み出ています。訛りのある口調もみどころのひとつでしょう。

 ”泣き寝入り”を余儀なくされた彼の復讐からは何も生まれませんでした。社会の弱者の憤りをどこに訴えればよいのか、警察もとりあってくれない。生きる気力はあまり感じられず、死を覚悟しての犯行だったのでしょうか。

 たけだの過去を聞いた少年忠は”悪い人ではない”と認識。それを説得する古田刑事。
説得シーンは作品のメインとなっていましたが、どうしても少年の心理は捕らえ難く、ラストはちょっとしっくりこないような感じがしました。 


第350話『壁の中の赤い殺意』
1982/2/27放送
主なスタッフ プロデューサー:近藤照男、樋口祐三
監督:下村和夫 脚本:高久進 撮影:下村和夫
構成:深作欣二、佐藤純弥
生命保険会社社員(大竹信雄)
あらすじ  銀行強盗に刺され入院した津川警部補。
同じ病院で入院していた老婆と共に退院。
マンション住まいの老婆宅へ赴くと、そこはもぬけの空で家財道具などがなくなっていた。
老婆は家族に見捨てられたのだった。
心配になった津川警部補が度々訪れると、マンションの多くの家のポストに札が投函される奇妙な現象が発生した。そして怪しい人物が目撃され事態は思わぬ方向へ進む・・・。
コメント  保険会社の主任、大竹。
ごく普通のサラリーマン。
母親と奥さんに挟まれ悩み、揺らぐところが現実的というか身近なテーマで本来の”ハードボイルド”から離れている気がする作品。
こういった作品での大竹は今までの出演作品から比べるとやはり物足りないです。
 新しいテーマに挑戦するという点では評価できますが。。

 登場する老人たちのあまりにもリアルな表情が強烈で、他のものが霞んで見えてしまう、そんな感じを受けました。





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