胎内の記憶・出生の記憶 池川クリニック 池川 明
要旨
調査内容は氏名、子供の年齢、記憶がある場合その年齢、胎内と生下時別に記憶があるかどうか、正常分 娩かどうか、安産か難産か、産科的処置が必要だったかどうか、などについて質問した。
対象・方法:
調査期間は平成12年8月から12月までの5ヶ月間でアンケート用紙を配布し、回収できたものについ て検討を加えた。対象は子供のいる母親で 当院19名、助産院31名、幼児開発協会17名、保育園幼稚園12名 合計79名からアンケートを回収できた。
結果:
記憶のあった子供の年齢は平均3.0±0.9s.d.(範囲1.5―6歳:n=49)であった。胎内 の記憶は52%、生下時の記憶は41%にあった。
胎内の記憶の内容は表2に示す。明暗色20、動き19、胎内での状態19、感情16、温感10、お腹 の状態10合計84の記述が寄せられた。また生下時の記憶については感情14、動き12、分娩時の記憶11、明るさ7、寒さ2、合計46の記述が寄せられ た。
はたして胎内での記憶はあるのでしょうか?
退行催眠(ヒプノセラピー)では胎内での記憶や分娩時の記憶が沢山出てきます。
一方陣痛のストレスがストレスのない帝王切開との比較で記憶に関係する、と考える人もいます。
記憶をしゃべるお子さんたちがいることはちょっと注意すれば身近にきっと少なからずいると思われます。しかし最近テレビでも放映されたりしてその認 識が高まってきてはいますが、まだまだ一般的にはそうした胎内の記憶が赤ちゃんにあるとは信じられていません。
そこで赤ちゃんは記憶があるのか、どんな記憶があるのかを調べてみようと思いました。
もし胎内の記憶、生下時の記憶が赤ちゃんにあるとしたら、妊娠中や分娩の様式そのものに大きな影響を与えます。もし記憶がないのでしたら大人の世界 観で分娩に望む今の状態でもいいのかも知れませんが、もし記憶があるのでしたらそれこそ分娩に至るまでの過程が人生の始まり、人格形成などに大いに影響す る可能性を考慮した扱いをしなければならないでしょう。
そこで私には退行催眠の技術はないのでアンケートで答えて貰う、という間接的な方法をとるしかありませんでした。それでもかなり驚くべき結果ではな いかと思います。
退行催眠の話はいっぱい本が出ていますので興味のある方はお読み下さい。著者の何人かははれっきとした西洋医学の医者で、しかもその世界では権威と いう人もいます。
以下に今回のデータをお示しします。
表1 胎内と生下時の赤ちゃんの記憶保有率
|
全例 |
|
|
|
|
|
表1 |
|
|
|
|
|
記憶 |
|
|
|
|
|
胎内 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
生下時 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
表1によれば赤ちゃんに胎内での記憶は約半数(53.2%)にあり生まれたときの記憶は約4割にある(40.5%)事になります。意外に多くの赤 ちゃんが記憶を持っているようです。ない、という回答ではまだ赤ちゃんが小さくしゃべれないので、という回答もありました。もっともな事だと思いますが、 今回のデーターには回答してくださった方全てを含んでいるので除外していません。
表2 分娩の内訳(かなり大雑把な分類です)
|
安産 |
|
|
難産 |
|
|
陣痛促進剤 |
|
|
逆子 |
|
|
帝王切開 |
|
|
吸引分娩 |
|
安産、難産は回答者の感じ方で決めていただきました。すなわちご自分のお産が経腟分娩でスムースだとしてもご本人が難産と思えば難産、という回答に なっています。実際には分娩に時間がかかって苦しかったという方がほとんどでした。
表3 分娩様式べつの記憶保有数
|
|
|
|
|
|
|
|
|
全体 |
|
|
|
|
|
|
|
胎内記憶 |
|
|
|
|
|
|
|
生下時記憶 |
|
|
|
|
|
|
正常分娩では胎内記憶52%(25/53)、生下時記憶40%(21/53)
安産では胎内記憶61%(17/28)、生下時記憶61%(17/28)
難産では胎内記憶71%(5/7)、生下時記憶100%(7/7)
陣痛促進剤使用では胎内記憶67%(10/15)、生下時記憶33%(5/15)
帝王切開では胎内記憶20%(1/5)、生下時記憶20%(1/5)
以上の結果になりました。
難産では記憶を持っているお子さんが多い事がわかります。
また帝王切開では記憶の保有がむしろ低くなります。帝王切開の場合陣痛があって帝王切開になったのか、選択的帝王切開だったのかが問題になるかと思 われますが、今回は区別していません。
次回アンケートでは区別したいと思います。
表4 胎内の記憶の具体的内容
|
分類 |
内容 |
|
合計 |
総合計 |
|
明るさ色 |
|
|
|
|
|
|
赤 |
|
|
|
|
|
白 |
|
|
|
|
|
明るい(少し) |
|
|
|
|
|
暗い |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
動き |
|
|
|
|
|
|
グルグル |
|
|
|
|
|
ぷかぷか |
|
|
|
|
|
とんとん |
|
|
|
|
|
ジャンプ |
|
|
|
|
|
泳ぐ |
|
|
|
|
|
キック |
|
|
|
|
|
寝ていた |
|
|
|
|
|
うんちした |
|
|
|
|
|
ガラガラで遊んでいた |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
胎内での状態 |
|
|
|
|
|
|
お臍から外を見ていた |
|
|
|
|
|
パパとママを選んできた |
|
|
|
|
|
ずっーと待っていた |
|
|
|
|
|
お友達も大丈夫 |
|
|
|
|
|
歌を聴いていた |
|
|
|
|
|
外の声が聞こえた |
|
|
|
|
|
テレビを一緒に見ていた |
|
|
|
|
|
超音波ゼリーにびっくりした |
|
|
|
|
|
ママが痛いのでじっとしていた |
|
|
|
|
|
お腹の中の格好をポーズ |
|
|
|
|
|
へびがいた |
|
|
|
|
|
ごちゃごちゃしていた |
|
|
|
|
|
お臍からひもが出ていた |
|
|
|
|
|
お風呂に入っていた |
|
|
|
|
|
お父さんのお腹にいた |
|
|
|
|
|
双子の位置関係を示す |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
感情 |
|
|
|
|
|
|
楽しかった |
|
|
|
|
|
嬉しかった |
|
|
|
|
|
寂しかった |
|
|
|
|
|
お腹に戻りたい |
|
|
|
|
|
もっとお腹にいたかった |
|
|
|
|
|
狭かった |
|
|
|
|
|
苦しかった |
|
|
|
|
|
気持ちよかった |
|
|
|
|
|
臭かった |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
温感 |
|
|
|
|
|
|
あたたかい |
|
|
|
|
|
冷たい |
|
|
|
表5 分娩時の記憶
|
分類 |
内容 |
|
合計 |
総合計 |
|
感情 |
|
|
|
|
|
|
痛い |
|
|
|
|
|
苦しい |
|
|
|
|
|
早く出たいと思った |
|
|
|
|
|
落っこちる感じ |
|
|
|
|
|
どきどきした |
|
|
|
|
|
きつかった |
|
|
|
|
|
泣いた |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
動き |
|
|
|
|
|
|
くるりと回る |
|
|
|
|
|
すーっと出る |
|
|
|
|
|
ばんと出た |
|
|
|
|
|
うんといきんで出た |
|
|
|
|
|
頭から出てきた |
|
|
|
|
|
飛んだ |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
生まれたときの状態 |
|
|
|
|
|
|
裸だった |
|
|
|
|
|
喉に何か詰まっておえっとした |
|
|
|
|
|
医者が見えた |
|
|
|
|
|
みんながおいでおいでと言った |
|
|
|
|
|
お母さんの顔が不思議で見ていた |
|
|
|
|
|
ママの頑張れという声が聞こえた |
|
|
|
|
|
周りに人がたくさん居た |
|
|
|
|
|
帝王切開の記憶(作文を書く) |
|
|
|
|
|
分娩の時の姿勢をした |
|
|
|
|
|
外陰部を指さす |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
明るさ |
|
|
|
|
|
|
まぶしい |
|
|
|
|
|
明るい |
|
|
|
|
|
暗い(穴のよう) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
温感 |
|
|
|
|
|
|
寒かった |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
表4−5は具体的にお子さんがどのようなことを言っていたのかというまとめです。
実に様々な記憶が出てきます。
胎内では色や明るさ、胎動に関する記憶が多いようです。しかし外をみていた、という本当なら驚くべき話をする子もいます。退行催眠ではこうしたこと をいう証言はいくつもありますが、実際にそういった事を覚えている子もいるらしい、と思える内容です。
これよりもっと驚いたのは、こうした話を聞いた妊娠中の保母さんが「実は自分の勤めている保育園で2−3歳の子供たちがお腹の赤ちゃんが動いている のが見えると言う」という証言でした。お腹に顔を近づけて何人ものお子さんがそう言うことを言ったらしいのです。この事は今回のアンケートには含まれてい ませんが、4−5歳のお子さんはそういった事は言わなくなる、ともお話して下さいました。
やはり2−3歳というのが記憶にしても赤ちゃんと繋がる何かがあるのでしょうか?
次ぎはおまけです。
おまけ 表6 夢で分かった
|
妊娠5ヶ月「男の子」という夢 |
|
|
名前を教えてくれた |
|
|
逆子が治ったのが分かる |
|
|
妊娠中次のこの性別を教える |
|
ま、こんな事もあるらしい、と言うことで・・・・・
名前を教えてくれたお子さんの話は具体的で、とても興味を引かれる話です。機会があればまた載せます。
恐らくこうしたことに我々大人が意識を持つようになると、もっと色々な話が出てきて、色々な事が分かってくるでしょう。
その全てが真実といえるのかどうかは分かりませんが、今回退行催眠で出てくる証言の一部が普通のお子さんからも聞くことができるらしい、という事が 分かっただけでも妊娠・お産に与える影響はかなりのものがあるのではないでしょうか。一つ一つみていくと、実に面白い結果です。様々な事が分かりますが、 興味ある方は当クリニックが賛同している「生きがいの創造」PHP出版 などをお読み下さい。たいへん面白いですよ。
アンケートからの実践
アンケートを基に妊婦さんに胎内ですでに赤ちゃんはいろいろ見聞きしている、という話をすると、それまでよりも格段に胎児への意識の向け方が良くな るようです。
それに分娩時のハグを加えたところ、入院中疲れたので赤ちゃんをみて欲しいと希望する方は激減し、今のところ一人もいません。またそうした方は確実 に母乳をあげています。そしてなにより、赤ちゃんの表情がとてもよく分かるようです。
一ヶ月健診で来られた方も、ほとんど母乳だけで大丈夫で、しかも子育てが楽しい、と一様におっしゃいます。やっと分娩と子育てが繋がってくる方法が 見つかった、という感じです。
単に外来で赤ちゃんに話しかけて貰う、生まれたときにハグする、というだけでこんなに子育てが楽しくなるのであれば、実践しない手はないですね。簡 単な事なので誰でもできます。お父さんも参加できるので、どんどん赤ちゃんに話しかけましょう。
今後アンケートは続けていきたいのですが、これをお読みになった方で同じような経験がある方はぜひメールを下さい。
平成13年8月に飯田史彦著「人生の価値」〜私たちは、どのように生きるべきか、が出版されました。この5章は妊娠分娩に関する話で、これからお産 をする人などにはとても価値のある章だと思います。定価1,600円でお勧めの一冊です。ぜひ皆さん、書店でお買い求め下さい。
参考文献
1.生きがいの創造 飯田史彦 PHP 1996
2.生きがいのマネジメント 飯田史彦 PHP 1998
3.生きがいの本質 飯田史彦 PHP 1999
4.愛の理論 飯田史彦 PHP 2000
5.生きがいの催眠療法 飯田史彦 PHP 2000
6.人生の価値 飯田史彦 PHP 2001
7.生きる意味の探求 グレンウィリントン、ジュディス・ジョンストン 飯田史彦訳 徳間書店 1999
8.誕生を記憶する子供たち デーヴィッド・チェンバレン 片山陽子訳 春秋社 1991
9.前世療法 ブライアン・L・ワイス 山川紘矢・亜希子訳 PHP文庫1996
10.誕生の記憶 春秋社編集部 春秋社 1992
11.光を放つ子供たち トーマス・アームストロング 中川吉晴訳 日本教文社 1996
12.前世を記憶する子供たち イアン・スティーヴェンソン 笠原敏雄訳 日本教文社 1990
13.輪廻する赤ちゃん 平野勝巳 人文書院 1996
14.生まれ変わりの研究 サトワント・パスリチャ 笠原敏雄訳 日本教文社 1994
15.生きがいのメッセージ ビル・グッゲンハイム、ジュディ・グッゲンハイム 飯田史彦訳 徳間書店 1999
個人的にはチェンバレンの「誕生を記憶する子供たち」と「生きがいの創造」をはじめとする「生きがい論」仮説が好きです。
最近出た「人生の価値」5章も妊娠関係の話がまとまっていて産婦人科医としてお勧めです。
2001(平成13年)
5/20(日) 神奈川県保険医協会日常診経験交流会
9/23(日) 北海道保団連医療研究集会
11/3(土・祝)倉敷「生きがいネットワーク」第一回総会
9/23(日) 朝日新聞家庭欄に取り上げてもらいました
2003(平成15年)東京保険医協会会報1月号 こちら
胎内の記憶
池川クリニック 池川 明
胎内での記憶があることは、100年以上前から知られていたが、きちんとした調査がされたことはほとんどなかった。
1960年代から、退行催眠やLSDなど補助手技を用いた心理療法が行われるようになり、その治療過程において頻繁に胎内記憶が語られるようになっ てきた。
一方、現在の教育現場における混乱から、妊娠中の胎児への働きかけ、いわゆる胎教の重要性が指摘されつつある。そうした事から、胎内記憶を調査す ることは、育児に重要な意味があると考えアンケート調査を試みた。調査期間は平成12年8月から14年1月まで当院、助産院、保育園などから、合計113 件のアンケート調査の回答を得ることができた。
胎内での記憶があると回答したのは67件59.3%で、同時に調べた出生時の記憶があると回答したのは46件 40.7%であった。
以上より、胎児・新生児には記憶がある、ということが前提の妊娠・分娩を取り扱いが今後必要であろう。
The survey has been accepted for POSTER presentation at the XVII FIGO World Congress of Gynecology and Obstetrics to be held November 3, 2003 in Santiago, Chile.
The purpose of this study was to attempt to establish proof of a child's memory in the womb and/or at birth.
A questionnaire on the baby's memory in the womb and at birth, on the mother's feeling during the delivery, and on easy delivery or hard labor, was distributed to 1773 parents of nursery schools in Japan. The investigation period was during the months of August and September, 2002. The total of 838 questionnaires were answered, giving an overall response rate of 47.3%.
According to the mothers' replies, there were 288(34.4%) cases of children with memory in the womb. Similarly, there were 197(23.5%) cases of children with memory at birth.
It was observed that there was a tendency of existing memory in the womb in the cases of the mother's talking to the fetus during pregnancy. However, there appeared no such relationship in the cases of memory at birth.
The rate of the possession of memory in the cases of Caesarean section appeared to vary regardless of the existence of labor.
The irregularity of delivery such as vacuum extraction, forceps extension, use of the uterotomica, breech presentation, coiling of the cord, did not influence the possession of memory.
The rate of the possession of memory in the womb was higher in the cases where the mother thought to have had a hard labor compared to the cases of easy delivery.
When the mother thought that the labor had been hard there was a tendency of negative image seen in the child's memory; conversely, in the cases of easy delivery the image was positive.
The survey results showed that the mother's effort to communicate with the fetus as well as the feeling of the mother during pregnancy had the possibility to influence the baby's memory in the womb and/or at delivery.